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484 永劫の安眠「タナトス・ヒュプノシス」

 おぞましい笑顔を見せていた魔将軍アビスは、顔を上げて麗しい美少女の表情に戻っていた。


「さあ、最高ーのプレゼントをあげちゃうわ! キャハハハハ!」


 魔将軍アビスはそう言うと空中で何かの魔法の詠唱を始めた。

 すると、辺りは一面紫色の霧に包まれていく。


「これがアタシちゃんの最高の魔法よ」


 魔将軍アビスの作り出した紫色の霧はあっという間に周囲数キロに渡って広がった。


「何だこれは! 毒なのか? みんな、霧を吸い……こ……む……」

「ひいいー何なんだ……こ……れ……h」

「魔法の一種……か……なn……」


 霧に包まれた騎士団や武士団は次々とその場に倒れていった。


「何ですかこれは! くっ……不覚を……と……り」

「武士団、撤退……せ……」

「ランザン、一度地上に……降り……」


 ゴーティ伯爵、ミクニ兄妹といった歴戦の戦士も紫の霧を吸い込んでしまい、その場に倒れていく。


「むう、この霧は……何じゃ……このワシ……が……ね……む」

「皆様、これは超強力な睡眠魔法! ディスペル……マジッ……」


 なんと、この紫の霧は魔法耐性に自信のありそうなアンさんやルームさんすら取り込んでしまい、その場に倒れてしまった。


「グオオオァァ……ァ」


 そして更に、紫の霧は人間だけでなく、魔族、モンスターまでもその場に倒してしまう。


「アビス殿! 一体これは……! お前は一体何を……し……た……?」

「あら、パンデモニウムちゃん、アンタもこれには耐えられないみたいね。キャハハハハ」

「お……ま……え、何……を……か……ん……」


 魔将軍パンデモニウムは普通の魔法程度ではまるで効果の無い超上級の魔族だ。

 その魔将軍パンデモニウムですら、魔将軍アビスの魔法には抵抗できなかった。


「あら、倒れちゃったのね。魔将軍って名乗ってるのに、だらしないわね。キャハハハハ!」


 魔将軍パンデモニウムは部下もろともその場に倒れてしまった。

 魔将軍アビスの魔法は、敵味方関係なくその強大な効果を発揮してしまったのだ。


「何なの! これは……。呪いだというのなら、私が解除してみせます。アンチカーズ!」


 エリアさんの解呪魔法が辺り一面に広がる。

 しかし、解呪魔法は一切何の効果も出さず、一度倒れた者達はその場から立ち上がることは無い。


「どういうことなの、呪いの類じゃないの? それなら……ディスペルマジック!」


 エリアさんの魔法解除スキルが発動し、辺り一面に広がった。


「ん、何だったのだ、私は一体どうしていたと?」


 エリアさんのスキルのおかげでゴーティ伯爵と数名が立ち上がった。


「どうやら私達は何かの魔法を喰らってしまった……よ……う……で……」


 だがそれも一瞬。

 立ち上がったはずのゴーティ伯爵は再びその場に倒れてしまった。


「無駄よ、無駄無駄。アタシちゃんの魔法はそんなスキルでは解けないから。キャハハハハ!」


 魔将軍アビスが勝ち誇ったように笑っている。


「魔将軍アビス、貴女……一体何をしたの?」

「あら、教えてあげる義理は無いんだけど、折角だから教えてあげる。アタシちゃんの魔法は『永劫の安眠タナトス・ヒュプノシス』、痛みを感じることも無く、その場に眠り続ける魔法よ」

「それならなぜ、起きたはずのゴーティ伯爵様達がまた眠ってしまうの!?」

「キャハハハハ、それはね、アタシちゃんの魔法が呪いでも精神関与でもないからよ。アタシちゃんの魔法はね、欲求を最大に肥大させたのよ」

「それは……?」


 魔将軍アビスが何かを言っている。

 ダメだ、ボクもだんだん眠くなってきた。


「アタシちゃんはね、生物の三大欲求の性欲、食欲、睡眠欲の睡眠欲を最大限に肥大させたの。コレでそこにいるヤツらはそのまま眠り続けて何も食べることも無く衰弱死するのよ……キャハハハハ!」


 ダメだ……もう声が聞こえない……ボクは……その場に力尽きて……倒れて……しまっ……た……。


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