483 モンスターの川流れ
ソウイチロウさんの言っていることから考えられるのは……。
あのモンスターの群れは魔将軍アビスによって恐怖と痛みを感じないようにされている。
モンスター達の数は増える一方。
だが、モンスター達は思考能力を失っているらしく、決められた行動しかできない。
ソウイチロウさんは、これらのことからボクにあのモンスターの大軍を倒す方法を考えろと言ってるのだ。
まるでボクがソウイチロウさんの部下になって仕事をしろと言われているような状態だと言える。
だが、それが嫌かと言えば別にそうではない。
ソウイチロウさんはリーダーとしての器があるのだろう。ボクに対して頭ごなしに何かをしろと言っているのではなく、ヒントを出した上で自分のできることをしろと言っているのだ。
考えるんだ。
あのモンスターの群れは並大抵の方法では倒せるものではない。
それはあの二千人以上の騎士団が撤退させられたことからも見えてくる。
ボクがあの中心にいきなり飛び込んで周りを全て水や溶岩にするというのも一つの手だが、そこに行くまでのモンスターを倒すのに時間がかかる。
ここにマップチェンジで巨大な壁や山を作ってモンスター達と人間のいる場所を隔てるというのも一つの手だが、それはあくまでも防衛手段にしかならず、攻撃という点では致命傷を与えることにはならない。
アンさんやルームさんの魔法で一気にモンスターを倒してもらうのも一つの手だが、ここで雑魚の群れ相手に大魔法を使ってしまうと魔将軍アビスとの戦いで魔力切れということも考えられる。
そう考えると魔法での一気に殲滅は得策ではない。
こう考えている間にもモンスターの群れの進軍は続く。
……そうだ、これなら確実という方法があった!
「カイリさん、貴方は水の流れを自在に操る事ができるんですよね?」
「あ、ああ、そうだぜー。オレのスキルなら水の流れを操るのは容易に可能だからなー」
これならできる!
ボクはあの大量のモンスターの群れを倒す方法を思いついた。
ボクは自分の足元に向かって手を広げてマップチェンジのスキルを使った。
「ボク達のいる場所から縦一列に地面を高い壁にチェンジ!」
ボクはまず最初に考えた壁でモンスターと人間の立ち位置を隔てることを実行した。
十数メートルの高さの堤防のような壁がモンスター達とボク達人間側を隔てた。
その直後。
「モンスター達のいる足元を大きな河にチェンジ!」
ボクのマップチェンジスキルは一万近いモンスター達のいる足元を大河に変えてしまった。
「な、何なのよ⁉ これは⁉ ⁇」
魔将軍アビスがいきなりの急展開にビックリしている。
「よーし、ユカ。後は俺に任せなー! 水よ、荒れ狂え。川の流れよ一気に濁流になり海まで流れてしまいなー!」
カイリさんのスキル、『潮流自在』は大河に飲み込まれたモンスターの群れをことごとく呑み込んでしまい、激しい濁流は海にまで一万近くのモンスターの群れを押し流してしまった。
大河の激しい濁流で海にまで押し流されたモンスター達は、泳ぐだけの思考も無く、水から這い出る方法も考えることも無くその全てが海の藻屑となった。
「やった!」
「ユカ、お前マジですごいなー。こんな戦い方普通思いつかないぜー。
唖然としたアビスが空中に浮いたままその様子を見ていた。
「な……何なのよ何なのよ! アタシちゃんの作戦をことごとく無茶苦茶にして、悔しい! 悔しいー!」
魔将軍アビスは圧倒的な勝利を確信していたのに、その計画が一気に水で押し流されたことを悔しがっていた。
「絶対に許さない……アタシちゃんをコケにしたこと、死んでも後悔させてやる!」
魔将軍アビスは怒り心頭。
そしてその直後、残虐に人間をまとめて殺す方法を思いつき、おぞましい笑顔を浮かべた。




