480 きっとボクら きっと勝てる!
S級モンスターを誘導したボクは奴らを全部まとめて地の底に送ってやった。
しかしマップチェンジのワープ床でこんなことができるとは。
ボクはモンスター達が戻ってこれないようにワープ床を元の地面に戻した。
これであのS級モンスターの大半は地の底で動けずそのまま朽ち果てるか、それともソウイチロウさんの言うようにこの地底の底がマグマの海だとしたら高温で溶けてしまうだろう。
ボクがS級モンスターの群れと戦っている頃、父さん達は大量のB級モンスターを次々とねじ伏せていた。
流石はモンスター100体斬りと言われるだけに、父さんはほとんどダメージを受けずにモンスターを次々と倒していた。
その後ろ側には兄さんとハンイバルさんがいる。
父さん達は小さな円を作るようにして周囲のモンスター全てに対応できるように戦っていた。
それぞれが百体くらいのモンスターを相手に、善戦している。
父さん達はボク達のいない間このようにしてこの国をモンスターの脅威から守ってくれていたんだ。
ボクは改めて父さんが凄腕の戦士だったと感心した。
だがモンスターの数は増える一方で減る様子が無い。
やはりここにいるモンスターを倒すよりも、発生源を潰さないといけないのだろうか。
現時点での状況は……。
ボク達人間側の戦力はエリアさんのおかげで死者はまだ出ていない。
それに対して魔族やモンスターは一万以上が倒されている。
だがそれでも戦力差は歴然。
人間に対して魔族の軍勢の数は三万以上いるのだ。
その上敵将の魔将軍はリーダー格のゲートが大魔女エントラ様とどこかに消えてしまったとはいえ、魔将軍アビス、魔将軍パンデモニウムの両方がまだ健在だ。
ゴーティ伯爵様のおかげでミクニ・リョウカイ様の命は助かったものの、魔将軍パンデモニウムがあの破城槌だけで倒せるほど弱いはとても思えない。
それに今はどこかに姿を隠している魔将軍アビス。
彼女は残虐で冷酷な性格だ、どのような手段に出てくるかわからない。
つまり、今のボク達人間側と魔族の戦いは……相変わらず魔族の有利になっていると言える。
ボクのマップチェンジスキルで大半のS級モンスターを地の底に追いやったので、S級モンスターはほとんど残っておらず、今この場にいるのはA~C級までのモンスター達だ。
そしてその数は地平線が見えないほどの数だと言える。
こいつらを一体一帯倒しているとキリが無い。
それに戦闘が長引けばそれだけ犠牲者の出る確率も増えてしまう。
戦闘はこれ以上長引かせるわけにはいかない。
そのためにできることを考えなくては。
「ユカ様、ザコの一掃は私にお任せ下さいませ!」
「ルームさん!」
「ユカ様、僕達もいます。さあ、共に頑張りましょう!」
「ホームさん!」
ボクが二人に応えると、今度は大きな姿でボクに飛び掛かってきた何ががいた。
「ワォーーン!」
ボクの後ろでは二匹の狼が獲物を狙って息を荒くしていた。
そうだ、聖狼族のこの双子もいたんだ。
双子の狼、シートとシーツの二匹は、レベルで言えば50以上。
これはA級モンスターとS級モンスターの間の強さだと言える。
これだけの戦力がいれば、いくら相手がどれだけの数だと言っても負けるわけがない。
さあ反撃開始だ。
これだけの強さの仲間がいるならいくら敵の数が多くても、ボク達は勝てる!
ボクは遺跡の剣を強く握り、モンスターの群れに飛び込んでいった。
シート、シーツの二匹はB級、A級モンスターを次々に斬り裂き、噛み砕く。
ホームさんの剣技がアンデッドを次々に光に変えていき、ルームさんの放った魔法は遠方に待機していたモンスター達の群れを一掃した。
この10分少しでボク達は数千のモンスターを倒した。
これがS級冒険者と言われる力なのだろう。




