474 死せる者達の軍団
魔族の大軍と武士団騎士団達による人間連合軍の戦いはまだまだ続いていた。
モンスターの大軍は倒しても倒しても次々と湧いてくる。
騎士団にも武士団にも疲労の色が少しずつ見えてきた。
犠牲者も若干ながら出ている様子だ。
幸い現在の時点で人間側に死者はおらず、少し離れた簡易病棟に隔離される形だった。
それに対してモンスターの群れは次々と屍の山になっている。
オークやゴブリンの血の臭い、オーガーの体臭等で辺りはすさまじいことになっている。
そんなモンスターの群れを一掃する大魔法が炸裂した。
ドラゴンの姿のアンさんによる轟雷が辺りのモンスターをことごとく打ち砕いたのだ。
『ソウイチロウさん。どうやらアレはアンさんの魔法の威力のようです』
『そうだな、しかしすさまじい威力だな、数千のモンスターが一瞬で消し炭になってるぞ』
アンさんは龍神と呼ばれる最強のドラゴン。
その力でボク達の心強い味方になってくれている。
「な……何なのよアンタはっ! アタシちゃんの用意したモンスターちゃん達を全滅ですって‼」
魔将軍アビスが激昂していた。
「フン、龍神を怒らせるからじゃ。まだこんなものワシの力の一部に過ぎぬわ」
「許さないから、アンタ絶対に許さないからね!」
魔将軍アビスは身体から気味の悪い黒い気体を辺りに放った。
気味の悪い黒い気体は死んだモンスター達のあたりに漂い、そしてその死体に吸い込まれている。
「さあ、パーティーの第二幕は……人間どもの阿鼻叫喚の血の輪舞よ」
なんと……魔将軍アビスの身体から出てきた黒い気体を吸い込んだ魔族やモンスターの死体が次々と立ち上がっていく。
「この子達はアンデッドの軍団。斬っても焼いても決して動きを止めずにどんどん仲間を増やしていくのよ。アンタ達の仲間がどんどんアンデッドになって死んでいくのを指をくわえて見てなさい、キャハハハハ!」
死んだはずのモンスター達がボロボロの身体のまま騎士団に襲いかかった。
アンデッドは頭を叩き潰しても全身を砕いてもその動きを止めようとしない。
今まで攻撃をする側だった人間達が今や防戦一方だ。
「何だコイツらは!」
「倒しても倒してもどんどん立ち上がってくるぞ!」
「コイツらに噛まれるなよ、噛まれたらコイツらの仲間入りだぞ!!」
アンデッドになったゴブリンやオーク、それに巨大なオーガーのゾンビ達は人間の盾を押し切り、どんどんなだれ込んできた。
このままではアンデッドにやられた戦士達がアンデッド化してどんどん敵が増えてしまう!
その状況を切り裂いたのはホームさんだった。
「レジデンス流剣技、縦一閃!」
ホームさんの持つ聖剣、『魂の救済者』がアンデッドの群れを打ち砕く。
彼の持つ剣で斬られたモンスターは復活することなくその場に崩れ落ちた。
どうやら聖剣で斬られたアンデッドはその姿を保てず、その場で消えてしまうらしい。
「お兄様、私も手伝いますわ……ホーリーエンチャント!」
ルームさんのかけた魔法は武士団や騎士団の武器に宿り、魔法のかかった武器が青白い光を放っている。
「さあ、聖なる属性が付加された武器ならアンデッドを倒すことができますわ」
「凄い」
「流石はルーム様だ!」
「コレでアイツらを倒せる!」
聖なる力で武器を強化してもらった騎士団達が次々とアンデッドを倒してゆく。
先ほどに比べ、アンデッドの数は減っていた。
「もうイヤイヤイヤイヤァ! 全部消し去ってあげる。アンデッド合成!」
魔将軍アビスは更なる闇の力でアンデッド同士を組み合わせて巨大なフレッシュゴーレムやボーンゴーレムを作り出した。
「さあ、巨大モンスターに蹂躙されなさいよ」
巨大合成アンデッドは、あまりの巨大さと強さに、強化したはずの人間の武器を次々に破壊している。
そして負傷者の数がどんどん増え、特設の簡易病棟で癒しの魔法を使うエリアさんの元に送られている。
「大丈夫です。私があなた達を死なせません!」
エリアさんは負傷兵たちに力強く語りかけた。




