473 大魔法大戦
大魔女エントラ様は魔将軍ゲートの切り裂いた空間に、魔将軍ゲートと二人で消えた。
「エントラ様!」
「お師匠様!」
ボクとルームが叫んだが、しかし返事は無かった。
大魔女エントラ様は魔将軍ゲートとどこに行ってしまったのだろうか?
しかし当の本人がいなければ何も聞けない。
「ぬう、どうやらえんとらはあの魔将軍ゲートとやらと別の空間に消えたようじゃな。しかしまさか……あの二人が兄妹じゃったとは……」
「イオリ様! それは……どういうことですか?」
アンさんにルームさんが問いかける。
「どういうことと言われても、そのままの意味じゃが。えんとらと魔将軍ゲートはどうやら門番の一族じゃったようじゃて」
「門番の一族? イオリ様、それは一体何なのですか?」
「門番の一族とは……ワシも聞いたことしかない古代の民のことじゃ。異界との門を開くことのできる一族でのう、強大な魔力を持った者たちじゃ。しかしあまりの力の凄まじさに人に見えぬように隠れ住んでいると聞いておったが、まさか……あのえんとらが門番の一族とはな」
ボクはアンさんの言っていることを聞いて今までのことに納得した。
大魔女エントラ様は古代の民で門番の一族と呼ばれる強大な魔力を持った人達の末裔だということだ。
「しかしまさかあの魔将軍最強の男が門番の一族の者だとはのう……厄介な相手が出てきたもんじゃ」
アンさんがルームさんと話をしている時、何者かが強大な魔法を放つっ!
「! 何じゃこれは!」
アンさんはブレスで魔法を相殺した。
「あーら、アタシちゃんの魔法を無効化するって、アンタただのトカゲじゃないのね」
「無礼な、ワシをトカゲ呼ばわりするとは……小娘、貴様こそ何者じゃ⁉」
魔族の少女は空中に浮いたままカーテシーを披露した。
「申し遅れました。アタシちゃんの名前はアビス。魔将軍アビスよ」
魔族の少女は自らを魔将軍アビスだと自己紹介している。
この少女が、自由都市リバテアを滅茶苦茶にしようとしたり、バスラ伯爵領でグリードスライムを暴れさせた張本人なのだろう。
魔将軍アビスは笑いながら魔法を連発している。
その魔法の一発一発が極大魔法クラスだといえる。
しかしアンさんはその魔法をいとも容易く全て打ち消している。
「このような豆鉄砲程度の魔法ではワシの鱗の一枚すら傷をつけることはできんぞ!」
「あーらあら、強がりいっちゃって、可愛いわね」
魔将軍アビスの魔法がさらに勢いを増した。
しかもその連発の頻度は先程よりも短くなっている。
流石のアンさんもこの魔法をしのぐのは厳しそうだ。
「くぅ……まさかこれほどまでとはのう、魔将軍、侮っておったわい」
「ほらほらほら、まだまだアタシちゃんの魔法は味わい尽くしてないわよ。もっとたーくさん召し上がりなさい。キャハハハハ!」
アンさんが魔法をしのぎ切れず、圧倒的な魔将軍アビスの魔法量に押し切られそうになっていた。
「し、しまった!」
魔法量を抑えきれなかった魔将軍アビスの魔法がアンさんのドラゴンの身体を貫こうとしている!
「危ないですわっ!」
「ぬっ⁉」
アンさんの危機を救ったのは、ルームさんだった。
ルームさんは杖を高く掲げ、アンさんを襲おうとしていた魔法を寸前で打ち砕いた。
「危機一髪でしたわ」
「ルーム嬢、感謝する。魔将軍アビスとやら……どうやら貴様はワシを完全に怒らせたようじゃな、竜の逆鱗に触れたこと……後悔させてやるわ!」
ドラゴンの姿のアンさんが高く咆哮を上げた。
すると、雲一つなく晴れていた天気が途端に激しい雷雨に見舞われた。
「轟雷よ、ここに在れ!」
アンさんの落とした雷が辺りを打ち砕こうとした時!
「レジストサンダー!」
ルームさんの魔法が辺りの武士団騎士団の全てを覆い尽くした。
魔法に守られた者達は光の膜で覆われている。
「紫電よ、荒れ狂うがよい!」
龍神であるアンさんの放った紫色の巨大な雷は、周辺にいた全てのモンスターを雷で打ち砕いた。




