471 大魔女対魔将軍
大魔女エントラ様は空を覆い尽くすばかりの翼をもつモンスターの集団を見ながら不敵に笑っている。
「百……千……まあ、こんなもんかねェ……妾の魔力をもってすれば一瞬だねェ」
大魔女エントラは高く杖を掲げた。
「さーてと、どれだけのモンスターが生き残るかねェ……アイオロストルネード!」
大魔女エントラの掲げた杖から猛烈な竜巻が巻き起こる。
その竜巻は空を飛ぶモンスター達を次々と巻き込んでいった。
大魔女エントラの恐ろしいのは、その魔法を使えることだけではない。
彼女は竜巻に巻き込んだモンスターを使い、別の空を飛ぶモンスターにぶつけることで更なる巻き添えをどんどん作り、モンスターを団子状に竜巻で絡め取っているのだ。
『ユカ、やはりエントラ様は絶対に敵に回したくないな……』
『ソウイチロウさん、それはどういうことですか?』
『ユカ、上空を見てみろ、私の言った意味が分かるから』
ボクはソウイチロウさんに言われたように上空を見上げてみた。
すると、上空では凄まじい光景が繰り広げられている。
大魔女エントラ様の作った竜巻の魔法は次々と飛行型モンスターを巻き込み、その翼を狙う形でモンスターがぶつかるように仕組まれていた。
『何ですか……アレは⁉』
『うーむ、いうなら夜店の綿あめみたいなものか台風だと考えればいい。中心で作られた大きな空気の渦が周りをどんどん巻き込んで巨大化しているというわけだ』
ボクは夜店の綿あめってのがよくわからなかったが、ソウイチロウさんの言っている意味は何となく理解できた。
大魔女エントラ様は風の魔法を使い、どんどん周りのモンスターを巻き込むことでその魔法を巨大化させているわけだ。
「これはなんともえげつない魔法じゃのう。いくら何でもワシでもここまではやらんぞ」
「イオリ、こんな所で見ているくらいならまだ残ってる向こう側の雲霞を片付けてくれないかねェ」
「言われんでもわかっておるわい! 轟雷よ、ここに在れ!」
アンさんが紫のドラゴンの姿で巨大な雷を反対側にいた空飛ぶモンスターの群れに叩き落とす。
するとその雷を受けたモンスターから漏電した雷は近くにいた別のモンスターを次々と感電させていく。
空を飛ぶモンスターは通常モンスターよりも強い。
その中にはC級モンスターはほとんどおらず、大抵はB級モンスターかA級モンスターに分類される。
だが大魔女エントラ様やアンさんはそれらのA級モンスターをいとも容易く地面に叩き落としているのだ。
「私もお師匠様やイオリ様に負けていられませんわ! テンペスト・ストーム!」
ホームさんが大魔女エントラ様やアンさんの高さよりも下にいる飛行型モンスターに暴風の魔法を放った。
その魔法は大量のモンスターを風で釘付けにして動けなくしている。
「やはり……お師匠様達には届かないようですわ。それならば……フリーザーストーム!」
ルームさんは風で動けなくなっているモンスターの群れを目掛け、凍気の魔法を上重ねした。
何体ものモンスターが氷漬けになっていく。
「まだですわ、ファイヤーブリザードォー!」
ルームさんが矢継ぎ早に魔法を唱えた。
今度の魔法は灼熱の突風だ。
先ほど氷漬けにされたモンスターは為すすべもなく灼熱の業火に包まれた。
戦意と飛行能力を失ったモンスターが次々と墜落していく。
三人の魔法により、空を覆い尽くしていたはずのモンスターはその大半が地面に叩き落とされ、空は雲一つない状態になっている。
「ふう、まあこんなものかねェ」
「エントラ……よくもやってくれたものだな! 俺の用意したモンスターをこれだけ屠ってくれるとはな……」
「その声は! ゲートッ‼」
大魔女エントラ様の前に現れたのは……魔将軍の一人、ゲートだった。
「エントラ……絶対に許さんぞ」
「それはこっちのセリフだからねェ! 我が一族の裏切り者……‼」
大魔女エントラ様と魔将軍ゲート、この二人には一体どのような関係があるのだろうか?




