469 決戦開始の鐘が鳴る
二千を超す魔族とモンスター達はボク達を認識したようだ。
一匹のモンスターが巨大な雄たけびを上げる。
それを皮切りにモンスター達はボク達の方に突撃してきた。
「ユカ殿、ここは吾輩に仕切らせていただきたいですぞ!」
ミクニの国王であるリョウカイ様がボクにお願いをしてきた。
「は、はい……是非、お願いします」
ボクはその勢いについ首を縦に振ってしまった。
「皆の者、これより始まるは伝説に残る戦、この戦いに参加できたことを後世に誇るがよい! さあ、鐘を鳴らせ‼」
リョウカイ様の檄が飛び、兵士達は激しく鐘を鳴らした。
鐘は数人がかりで抱える様な巨大なサイズだった。
だがリョウカイ様はこの鐘が必要だと考えていたのだろう。この鐘は船に乗せられてここまで運んでこられたものだ。
ジャーン! ジャーン‼
不思議な形の鐘が凄い音を出している。
その形は平べったく、ボク達の想像しているような鐘とは全く違った。
『銅鑼を鳴らして戦いがスタートって、まるで三国志か史記だな』
『ソウイチロウさん? この鐘はドラというんですか』
『ああ、ドラを激しく打ち鳴らすことで士気を高めようとしているようだ。そして……それは実際に効果があるみたいだぞ』
ボクがソウイチロウさんに言われて目の前の光景を見ると、ミクニの武士団が我先にとモンスターに突っ込んでいた。
「一番槍は俺だ!」
「なんの、オレこそが一番槍をもらう!」
「うおおおー、敵の大将はどこだー‼」
ミクニの武士団は血気盛んにモンスターを斬り払って突撃している。
「さあ、私達も負けていられませんよ。騎士団、進軍せよっ!」
「「「オオオーッッ!」」」
ゴーティ伯爵とラガハース騎士団長も掛け声を上げ、騎士団は槍を構えて敵軍に突入していった。
士気の高まった騎士団や武士団はゴブリンやコボルト、スケルトンにオークといったモンスターを次々となぎ払う。
二千匹以上いたモンスターは一瞬で全滅した。
そしてこちら側の被害はほとんど無い。
前哨戦はボク達人間側の圧勝だった。
「何と他愛ない、魔族やモンスターとはこの程度か」
「いや、おれたちが強すぎたんだよ」
「そうに違いねぇ、ハハハハ」
兵士達には余裕の見える者すらいる。
「貴様ら、何を無駄口叩いているか! 後で懲罰房送りになりたいか!」
「ひ、ひいい! リョウカイ様、申し訳ございません」
リョウカイ様は油断することなく、モンスターの群れと戦っている。
「吾輩の名はミクニの国王『ミクニ・リョウカイ』であるぞ! 命の要らない者はかかってくるがよいぞっ!」
リョウカイ様は自ら名乗りを上げることで、モンスターの群れを引き付けていた。
そしておびき寄せられたモンスター達は武士団の精鋭によって次々と屍に変わっていく。
モンスターは次々と倒れているはずなのだが、いっこうに減る気配が見えない。
そして武士団、騎士団のどちらにも少しずつ疲れが見え始めてきた。
「聖なる力よ、この場にいる正しき者達に癒しと力を与えたまえ……レザレクション!」
エリアさんのスキルが戦場を包んでいく。
今まで疲れていたはずの騎士団、武士団の人達に元気が戻ってきた。
「おお、これは奇跡だ!」
「これならオレたちはまだまだ戦える!」
「見ろ、モンスターが怯えているぞ」
どうやらエリアさんのレザレクションはボク達人間には癒しであるが、闇の力で生きているモンスター達にとっては、強力な攻撃になっているらしい。
エリアさんのスキルはA級モンスターを弱体化させるほどだった。
「あのモンスターは普通の兵士達には荷が重い、私達に任せてもらおう!」
冒険野郎Aチーム、それに父さんが戦場に躍り出た。
ここからはA級モンスターとA級冒険者の対決になる。
モンスターの屍の後ろからマンティコアやストーンゴーレム、キマイラやグリフォン等のB級、A級モンスターが次々と姿を現した。




