466 魔王軍大結集
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魔族の城、パンデモニウムの牙城には大勢のモンスター達が集結していた。
最弱のゴブリンやコボルトといったモンスターは大型モンスターの身体をブラシで磨いている。
また、別のゴブリン達は中型モンスター達のための餌を用意している状態だ。
このヒエラルキーではゴブリンやコボルトといったモンスターは最底辺の小間使い、雑用係なのだ。
だが、それに不満を漏らしているゴブリン達はいない。
「ギャウッ!」
ゴブリンが転倒し、モンスターに運んでいた食事を落としてしまった。
それをオークリーダーが怒り、鞭を振るおうとしている。
「ヨセ、パンデモニウム様ノ命令ダ」
オークリーダーは渋々鞭をしまった。
そう、魔将軍パンデモニウムは部下達に命じ、最底辺のゴブリンを虐げるなと命令していた。
これは別にゴブリンを守るためのことだけではない。
確かに中型モンスターや大型モンスターは強いが、絶対数で言えば弱者であるゴブリンやコボルトの方がよほど数は多い。
それだけ大量の数の雑用が離反してしまうと中型モンスターや大型モンスターの運用が上手くできず、折角の戦力が投入できなくなることをパンデモニウムは知っているのだ。
それ故に魔将軍パンデモニウムは、人間や最下層のモンスターを嗜虐することなく有用に活用している。
しかしここにいた人間はもう一人だけしか残っていない。
他の人間は魔将軍アビスのせいで全てが死んでしまい、パンデモニウムはアビスに命じて彼ら彼女らをアンデッドとして再生させたからだ。
アンデッドになったとはいえ元は人間。
それぞれの能力は劣化せずそのまま使える状態だと言える。
さらに、このアンデッド達は睡眠も休息も食事も必要としなくなったので、ゴブリンやコボルト達の雑務を手伝ってくれる有能な仲間になっている状態だ。
モンスターは魔法陣から次々と姿を現す。
この魔法陣は魔界に通じており、魔将軍ゲートが用意したものだ。
魔法陣の巨大さは闘技場だった場所に用意され、ドラゴンやサイクロプス、ボーンゴーレムといったS級の巨大モンスターが次々と召喚されている。
現時点で魔族の大軍の数は……四万以上に達した。
その内訳は……。
ゴブリンやコボルトといったD級小型モンスターが二万匹近く。
オークリーダーやスケルトンなどのC級モンスターが一万以上。
オーガーやマンティコア、スケルトンナイトにケンタウロスといったB級モンスターが五千以上。
キマイラやバンパイア、グリフォン、オークキンググリフォンナイトにリッチといったA級モンスターが二千以上。
アイアンゴーレムやドラゴン、サイクロプス、バンパイアロードといったS級モンスターが千以上。
……そして神話級のSSモンスターですら五百以上が存在する。
一国を相手にするとしても十分にお釣りが返ってくるレベルの大軍勢だ。
それらのモンスターを統括しているのが魔将軍三人である。
魔将軍ゲート。
魔将軍アビス。
魔将軍パンデモニウム。
魔将軍マデンはミクニでユカ達と戦い敗れたため今は存在しない。
これらの魔将軍はそれぞれが得意なモンスターを統括し、三部隊で人間達を殲滅しようとしている。
魔将軍アビスを中心としたアンデッドやスライム、バンパイア等といった命を持たない魔力で生きている集団。
魔将軍パンデモニウムを中心とした屈強な魔族達や魔獣を中心とした獣型の魔族や獣人達の集団。
魔将軍ゲートを中心とした高レベルの魔族や騎士、悪魔といった高位種族達による最強の魔王軍。
魔族の集団は中央闘技場に集まり、今まさに蹂躙を開始しようとしている。
だが、そんな空気を一変させる衝撃が辺りを襲った。
ズゴォォオオオオン‼
謎の大竜巻の魔法が、パンデモニウムの牙城のある岩山の中腹を大きく削ってしまったのだ。




