464 大船団の到着
未曽有の大水害から一晩が明けた。
全員が徹夜で水没しそうになったキャンプ設営地を建て直したので、全員がクタクタになっている。
ボクはキャンプ設営地の周りに張り巡らせた岩山を元の土地に戻そうとしたが、ラガハース騎士団長に止められた。
「ユカ様、某が考えるに、折角この平地にいい拠点が作れたのです、この立地はそのままにしてもらった方が魔族との闘いには良いかと思うのです」
確かにここは今、自然の要塞とも言える状態だ。
ボクのスキルだから簡単に作れたものだが、このような自然の地形がそうあるわけではないので、こんな難攻不落の要塞を作ろうと思っても簡単には作れない。
「でもそれでは兵隊とか物資の移動はどうすれば?」
「そうですね、それだと海面に接した場所だけなだらかな平地に戻すことは可能でしょうか?」
「はい、一部だけを元に戻すのはすぐにできます」
ボクはラガハース騎士団長の要望を聞き、海面に面した部分だけを元の平地に戻した。
確かにここだけが平らなら、空を飛ぶモンスター達はここからしか攻めて来れない。
空を飛ぶモンスターはエントラ様やアンさんが相手をしてくれるようなので、ボク達や騎士団等は陸地、海面から来る敵を迎え撃てば良いことになる。
ボクが大雨からキャンプ設営地を守るためにマップチェンジした岩山は、自然の要塞になってくれたというわけだ。
「本音おれたちも助かったと思ってるよ。魔族の大軍相手に設営地が襲われたらそこを拠点にしてても負けるかもしれなかったから」
「本当だよ。ユカ様がいなかったらオレ達はあの大雨で流されるどころか、騎士団のみんなとも合流できていなかったんだからな」
みんなのボクに対する評価がかなり高いのにビックリした。
『ユカ、みんなの評価は妥当だと思うぞ。お前は私のアドバイス無しでももう普通の冒険者や兵士よりはよほど強いんだからな』
ソウイチロウさんがボクのことを褒めてくれた。
そうか、ボクは知らず知らずのうちに、自分でも人に認められるくらいレベルアップしていたんだな。
ボクは疲れ果てた兵士や騎士団のために、再びキャンプ設営地の外れにマップチェンジスキルで温泉を作った。
昨日の大水害で疲れ果てたみんなは、温泉で体を癒した後、見張り番を除き、全員が疲れ果てたように眠りこんでいた。
だが、そんな空気を一変させる報告が届いた。
「船だ、船が見えたぞー‼」
間違いない、カイリさん達が到着したんだ。
ボクが岩山の上の方に上り海を見ると、水平線の向こうには大量の船が見える。
カイリさん達は、約束通り仲間を連れて船でここに来てくれたんだ。
「カイリさーん!」
ボクは岩山の上の方で大きく手を振った。
するとそれに気が付いたのか、船団で一番大きいアトランティス号から光が放たれた。
どうやらあの光は、大魔女エントラ様の魔法らしい。
大魔女エントラ様は、あの大嵐の中でも船が沈没せず、無事合流できたようだ。
船がどんどん岸に近づいてくる。
そしてついに船は浅瀬の手前まで到着し、そこに錨を下ろした。
大きな船から上陸用の小舟を下ろすことになった。
だが人数が多すぎてどうもきちんと降りれないようだ。
「みんな、一旦海に戻って。ボクがどうにかするから」
ボクは船の前の浅瀬にマップチェンジスキルで埠頭を作った。
凸凹になっている埠頭は海と陸とをつなぐ道になり、騎士団や武士団達は船から流れが止まることなく全員が陸地に降りることができた。
だが、その人数はボクや騎士団の人達の想定をはるかに超えるものだった。
その数総勢……5000人以上!
流石にキャンプ設営地にこの後追加で入れるとしても、3000人が限界だ。
残りの2000人は仕方なくそのまま船の上で寝てもらうことになった。




