461 決戦の前の羽伸ばし?
ソウイチロウさんがアドバイスしてくれたので、ボクがスキルで用意した温泉にここにいる人全員がゆっくりと風呂に入ることができた。
「ふー、風呂なんて何か月ぶりだろうな」
「どうにか体自体は海の水で洗ったりは出来たが、傷があるとアレかなりしみるんだよな」
「こんなに大量の水が使えるなんて王都にいたときぶりだよ」
風呂に入った兵士や騎士達は全員がほっとしている。
ソウイチロウさんのアドバイスが無ければ、ボクだけだとこんな温泉を用意して全員が身体を癒すことはできなかった。
父さん達も数か月ぶりの風呂にとても満足しているらしい。
「まさかこんな所で温泉に入れるなんてな」
「今からアタシ達入るんだから、覗いたら許さないよ!」
流石に男女比率が違い過ぎるので、女湯をわざわざ用意するだけのことはできなかった。
それなので、女性には男連中が全員風呂を終わらせてから入ってもらうことで同意してもらっている。
ボク達は女の人達に風呂に入ってもらっている間に食事の用意に取り掛かった。
ラガハース騎士団長達は全員で巨大な魔物肉の血抜きをした後、パーツに切り分けていた。
切り分けられた肉や野菜はハンイバルさん達や騎士団の担当が料理をし、魔法の使える人達は魔法を使って料理の火加減を調整している。
少しして陣営の全体に良い匂いがただよい始めた。
とてもお腹の空く良い匂いだ。
今日のメニューは魔物肉のローストに野菜たっぷりスープだ。
ここにマイルさんがいたら、植物を生やすスキルで果物を出すこともできるのだろうけど、まだ彼らは海の上だろう。
食事が用意できた頃、女性達が風呂から戻ってきた。
全員がお風呂をゆっくり楽しんだ後、食事も満足行くレベル。
これで明日以降の激戦に備える準備はできたといえる。
後は海から合流する予定のホームさんやルームさん、カイリさん達の船の到着を待つだけだ。
ボク達は食事を済ませ、武器防具鵜の手入れに取り掛かった。
今の所、まだモンスターは襲ってくる様子は無さそうだ。
だが、何だか様子がおかしい。
「ぬ、これは一体……この時期にここに嵐は起きることは特に無さそうなんだがな……」
「父さん、それは一体?」
「この辺りは確かに海に近いが、気候は大きく荒れることは今までに無かった、それがなぜか凄い空気を感じる……これは大嵐が来るぞ!」
父さんはここに大嵐が来ると予想している。
もし大嵐が起きてしまうと、折角全員で建てたテントが全て吹っ飛ぶ、下手すれば兵士達の中には流されてしまう者も出てしまうかもしれない。
「こんな時にエントラ様かアンさんがいてくれれば……」
残念ながらアンさんも大魔女エントラ様もどちらも空を飛んで偵察に向かっている。
この異常な気象のこととかを聞くことができない今、ボクにできることを考えなくては。
毎回毎回ソウイチロウさんに頼っているだけではダメだ。
ボクが自分で考えなくては。
だが時間はそれを許してくれない。
雨がぽつぽつと降り始め、あっと言う間に大雨が設営地を押し流す。
マズい、温泉が残ったままだとあのお湯もここに到達してしまう!
ボクは急いで温泉に向かった。
「目の前の温泉を普通の地面にチェンジ!」
ボクのマップチェンジで温泉は氾濫する前に普通の地面に一瞬で戻った。
そうだ、ボクのこのスキルでこの設営地の周りに大きな山か壁を作れば、ここが押し流される事は無くなる!
ボクは急いでみんなのいる場所に戻った。
「みんな、柱を押さえろ!」
「ロープを引っ張れ、飛ばされないように抑えるんだ‼」
「食料とかは少しでも高い場所に持って行け、浸水しないようにするんだ」
大嵐は既に思った以上の被害を出している。
早くしなくては、魔族の軍勢と戦う前に災害のせいでせっかくのコンディションが最悪になってしまう。
ボクはみんなを助けるため、マップチェンジスキルで巨大な山を作ることにした。




