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457 船上の戦闘

◆◆◆


 船は知らないうちにモンスター達に囲まれていた。


「マズいことになったなー」

「カイリ様、上空の(あやかし)どもは小生達にお任せ下さいませ!」

「リョウクウ、いいのか?」


 リョウクウ達はこの最悪の天候の中で飛龍と共に船から船に渡り鎖を次々に渡して疲労困憊といったところだ。

 これ以上彼女達に負担をかけるわけにもいかない。


「大丈夫です、鍛えてますから」

「でもよー」


 リョウクウの顔には傍から見て分かる程の疲れが見える。

 慣れない船での移動に加え、悪天候での作業、さらにモンスターの襲撃まで追加だ。

 これで疲れないわけがない。


「カイリ様は妻になる小生のことが信用できないのですか?」

「そ、そういうわけじゃあねーけど、お前の身体の方が心配でよー……」

「お心遣い、感謝致します。ですが、飛龍武士団は三日三晩飛び続けるような過酷な訓練に耐えています故、この程度のことでは……」


 その時リョウクウがガクッと力を落とし、槍を杖代わりにしてどうにか体制を保った。


「いいからそこで休んでろ。この船はオレ達の船だ、オレ達の居場所はオレ達の手で守る!」


 オレ達は疲れ切った飛龍と武士団を船室と倉庫に連れて行き、残った船員たちでモンスターの群れに立ち向かった。


「テメーら、ザコは気にするな。口から火を吐いたり炎や魔法を使うモンスターを重点的に狙え!」

「「アイアイサー!」」


 オレは甲板に飛び降りてきたモンスターを次々に海に叩き込んだ。

 この大荒れの海に放り出されたらほぼ死亡確定だ。

 オレ達は全員が鎖で船に身を繋げた状態で戦っている。


 そのため身動きはあまりできないが、転落の危険性はかなり減っている。


 上空にはキマイラ数体、マンティコア数体、リザードマンにゴブリンやコボルトといったモンスターが空を飛ぶグリフォンや空を飛ぶモンスターにしがみついてそのまま甲板に何体も降りてきている。


 この中で気をつけるのはキマイラやマンティコア、それにゴブリンメイジといった火の魔法や火炎攻撃を使えるモンスターだ。

 船に火がついたが最後、密集体型になった船はあっという間に火が燃え広がってしまう。

 それを避けるためにも火を吐く、火の魔法を使えるモンスターは率先して倒す必要がある。


「テメ―らはマンティコアやゴブリンメイジを狙え、オレはあのキマイラをやる!」


 オレは部下に指示を出した後、槍で上空のキマイラ目掛けて大波をぶつけてやった。


「波よ荒れ狂え、あのモンスターを海に叩き落とせ!」


 オレのスキルで今の海を穏やかにすることは出来ない。

 だが荒れている波の高さを変えることなら十分可能だ。

 荒れ狂う波は大きな三角波になり、上空を飛んでいたキマイラ数頭を飲み込んだ。


 翼の濡れてしまったキマイラは高く飛ぶ事ができずに逃げられなかったわけだ。


「やったぜ!」


 だが、流石はタフな化け物だ。

 キマイラは必死の低空飛行でどうにか甲板の上まで飛んで来やがった。


「まだ生きてやがったかよー」


 オレは槍でキマイラの口目掛けて深く突き刺した。

 槍が激しく貫いたことで、キマイラは火を吐く前にドラゴンの首を失った。


「お頭、オレ達もやりますぜ!」


 船員たちと武士団は数十人がかりでマンティコアの翼を潰し、鎖で縛って海に投げ込んだ。


 怪物の断末魔の叫びが海の藻屑に消える。

 これで残り数体といったとこか。


 だがキマイラはまだ残っていた。

 そのキマイラ目掛け、船員たちはとんでもないものを倉庫から持ち出した。


 攻城用のバリスタ。

 はっきり言って荷物の置き場に困るので乗せたくなかったデカブツだったが、ゴーティ伯爵の願いで一番大きなオレの船に乗せることになった物だ。


 船員と武士団が、そのバリスタをキマイラ目掛けて突っ込む。

 そのバリスタの巨大な杭が怪物の半身を押しつぶし、怪物は一瞬で絶命した。


「よっしゃ=!」


 これで残りはキマイラ二体に、ザコモンスターが数体といったとこか……。


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