452 戦いの決着
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海は荒れ、大地は裂け、天は轟く。
レベル70以上の神話級にも匹敵する魔将軍の対決は遠く離れたユカ達のいる場所にまでその炎や稲妻が見えたほどだ。
「どうした、その程度の力で某を、この魔将軍パンデモニウムに膝をつかせることができると思ったか」
「「アンタ、体力だけはバケモノよね」」
二人のアビスが同時に言葉を発した。
その瞬間、魔将軍パンデモニウムの放った剣戟がもう一人のアビスを消し去った。
「油断したようだな。いくら貴様が復活や分身をしようとて、この剛剣の剣圧で吹き飛ばせば意味はない」
「あー、ひっどーい。もう一人のアタシちゃん消えちゃったじゃないの」
ふくれっ面で怒っているような表情を見せている魔将軍アビスだが、その表情は明らかに作ったもの、つまりは演技である。
「しぶとい貴様とて、剣圧で吹き飛ばせばチリすら残るまい。流石にチリからでも復活できるわけではなかろう」
「まあそうね、でも……オレを本気にさせるとは……テメエ死んだからな!」
「ふん、慣れぬ演技は見ていて気持ちが悪い、その方がまだ対応のしようがあるわ」
アビスは美少女とは思えないおぞましい表情になっている。
「テメエマジでボコる……ゴミクズのようにズタボロにして踏みにじってやるぜ!!」
「出来るものならやってみろ……」
魔将軍アビスは手を広げ、熱線を次々に放った。
だが魔将軍パンデモニウムはその熱線をことごとく剣で弾いている。
「これは熱ではなく光、すなわちこの剣で軌道を変えれば某の体には当たらぬ」
「テメエ、すました顔をしてられるのも今のうちだぜ!!」
「何⁉」
魔将軍アビスは身体の一部を魔将軍パンデモニウムの後方に飛ばした。
「愚かな、あんな攻撃が当たると思ったか」
「バカはテメエだ!」
魔将軍アビスの飛ばした体の一部は、その姿を変え、磨かれた鏡のような表面になった。
「死になっ!」
「‼」
魔将軍アビスの放った光弾は、パンデモニウムをかすめ、後方の磨かれた鏡のような彼女の体の一部に跳ね返った。
「グワァッ!」
魔将軍アビスの放った光弾は、魔将軍パンデモニウムの頭部に直撃した。
そしてパンデモニウムの頭が地面に落ちた。
「あーあ、死んじゃった。まあいいか、今度は死んだパンデモニウムちゃんを下僕にすればいいんだから、キャハハハハ」
魔将軍アビスは頭部の無くなった魔将軍パンデモニウムの胴体を見ていた。
すると、いきなり頭部の無くなったはずのパンデモニウムの四つの腕は魔将軍アビスの全身を一瞬で切り刻んだ!
「げはっ! 何でなのよ⁉」
「油断大敵、と言ったところだな」
魔将軍アビスが頭部のない胴体から声を発した。
いや、鎧の下に隠していた頭部を鎧の上にせり上げたと言った方が正しいだろう。
「な……何でよ、死んだんじゃなかったの?」
「愚かな、地面に落ちている兜をよく見てみろ」
魔将軍パンデモニウムの落ちたと思われた頭部は、ただの兜だけだった。
彼はとっさの所で兜から首を引っ込めて魔将軍アビスの光弾の直撃を避けたのである。
「何よ、アンタ魔獣とかいうよりまるでカメね」
「憎まれ口を聞くのは良いが、貴様は今自分の状態をわかっているのか?」
「なッ⁉」
魔将軍アビスの首が魔将軍パンデモニウムの手に握られている。
だがそれだけではなく、彼女(?)の一部と思われるピンク色の何かを握っている。
「や、やめろ……それを返せ。いや、返し下さい。何でもしますから」
「ダメだ、貴様が約束を守った事があるか……」
「ヤメて、ヤメロヨォォォ!」
「ぬんっ!」
魔将軍パンデモニウムがピンク色の何かを握りつぶそうとしたその時、彼の後ろに何者かが姿を現した。
その人物は魔将軍二人に対し、大きな声で怒鳴った。
「お前達、何をやっている! 今はお前達が争っている時ではないぞ‼」




