451 魔将軍同士の対決
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真っ二つに両断されたはずの魔将軍アビスは、ニヤリと不気味に笑っていた。
「あらあら、アンタ紳士じゃないの? 女の子にこんなひどいことするの?」
「黙れバケモノ。この程度で死ぬ貴様ではなかろう」
「あらあら、やはりお見通しだったのね」
そう言うとアビスは真っ二つに分かれた部分から再生し、二人全く同じ姿に変化して、二人で笑っている。
「「ばあ、どう? 美少女が二人に増えたのよ。キャハハハ」」
「今すぐにその口を閉じろ。右と左から不快な声を放つな」
「「あらあら、美少女が二人って、両手に花っていわないかしら? ねぇっ!」」
魔将軍アビスが右から氷を、左から炎の魔法を魔将軍パンデモニウムに放った。
絶大な魔力が鎧を通してパンデモニウムに直撃した。
普通の魔物、いや、伝説のS級モンスターですら一瞬で倒せるほどの魔力だ。
だが魔将軍パンデモニウムは、その攻撃に全く動じていなかった。
「貴様こそ、某をみくびっているのか。この程度の魔法で倒せると思っているのか」
魔将軍パンデモニウムは無傷だ。
彼には強力な魔法耐性があるわけでもなければ、瞬時に再生する能力があるわけでもない。
彼は純粋にHP100000以上の体力を持っているのだ。
魔将軍アビスの魔法は約10000のダメージだった。
それが二つ同時に襲ってきたので総ダメージは20000といったところだろう。
だがその程度のダメージは魔将軍パンデモニウムに致命傷を与えるほどではない。
「「あら、でくの坊は体力だけはあるみたいね。それに獣並みの感覚だから痛みは感じないってわけね、キャハハ!」」
「黙れ、貴様の声は不愉快だ」
ザシュッ!
魔将軍パンデモニウムの剛剣が一瞬で二人の魔将軍アビスの首を刎ね飛ばした。
しばしの沈黙の後、首だけになった魔将軍アビスがけたたましく笑い出した。
「キャハハハハハハハ、ムダだって、ムダだって。アタシちゃんはいくら斬られても復活するんだから、意味のないことに無駄に力を使ってアンタってバカじゃないの?」
魔将軍アビスの首が空中に浮かびながら魔将軍パンデモニウムを罵倒している。
魔将軍パンデモニウムがその首を叩き潰そうとした時、もう一つの首が空中に浮きあがり、目から光線を放ってきた。
カッ!
激しい光線が魔将軍パンデモニウムの鎧を貫いた。
「ぬうぅ!」
彼の鎧はアダマンタイトで出来ている。
生半可な武器や魔法では傷一つつけることは出来ない。
それこそが、彼が召使の少女に鎧を汚した際に咎めなかった理由でもあると言えよう。
だが魔将軍アビスの目から放たれた光線はそんなアダマンタイトの鎧に穴を開けた。
それは彼女の魔力の強さのなせる業である。
彼女の目から放った光線は数万度にも達する高温だったのも手伝い、頑強なアダマンタイトの鎧に穴を開けたのだ。
「どうやら、手を抜いて勝てる相手ではなさそうだな」
「アンタ、生かして下僕にしてあげようと思ってたけど、もういいわ。死になさい!」
魔将軍アビスと魔将軍パンデモニウム。
レベル70オーバーの魔将軍同士が本気で対決した。
戦いの舞台は牙城ではなく、その上空に場所を移した。
あまりのハイレベルの戦いに空気が響き、震えた。
その魔力と闘気のぶつかり合いは、遠く離れた海すら大荒れにするほどのものだった。
魔将軍パンデモニウムの部下たちは、あまりの戦いの壮絶さに手出しすらできず隠れるだけだった。




