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448 奴隷の一族

 パンデモニウムは自身の部屋に戻り、酒をあおっていた。

 魔将軍と呼ばれる彼の部屋は、いたるところに武器が飾られている。


 だがこれは彼の使っていた武器ではない。

 全て倒した敵の持っていた武器だ。


 彼は倒した敵の武器を奪うことを喜びにしていた。

 武器の無いモンスターを倒した場合は、角や爪、牙といった武器になる部分を奪い飾っている。


 その数の多さは一流の武器屋でも太刀打ちできないほどだ。

 彼はその武器を眺めながら強い酒を飲むのが日課なのである。


「ご……ご主人様、どうぞ」


 奴隷から解放されたであろう少女は、慣れない仕事を見るからに恐ろしい相手にしていた。

 少女は震える手でパンデモニウムの空になった盃に酒を注ぐ。


「あっ!」


 怯える少女は思わず手を滑らせ、パンデモニウムの鎧に酒を浴びせてしまった。


「ひっ、申し訳ございません、申し訳ございません……」


 少女は死を覚悟しながら、パンデモニウムに何度も地面に頭を叩きつけながら謝罪した。


「何を謝る必要がある……」

「ワタシはご主人様の鎧を汚してしまいました。どうぞワタシを罰してください」


 少女は昔から奴隷だった。

 彼女は何度も代わった持ち主に日常的にひどい仕打ちを受けていた。

 彼女がパンデモニウムに謝ったのもその日常からすれば当然である。

 また、主人が粗相を許さずにそんな彼女をいたぶるのも当然だった。

 

「お前は自らがしようとしたことでミスをしただけだ。取り返しのつくことなら謝るより行動をするがよい。今お前のするべきことは何だ?」

「ワタシがすることは……」


 彼女は乾いた布を持って来てパンデモニウムの鎧を拭きだした。


「そうだ。それでよい。なあに、鎧は戦えばそれだけ汚れるものだ。この血塗られた鎧を恐れもせず拭くとはな、気に入ったぞ」


 パンデモニウムはその大きな手で少女の頭を撫でた。

 少女はその行為を黙って受け入れている。


「お前、(それがし)が怖くはないのか……」

「いいえ、怖くありません。今までのご主人様たちに比べて、ご主人様は温かい方です」

「温かい……だと?」

「はい、大きな優しさを感じます。ご主人様は……とても大きな方です」


 パンデモニウムは大声をあげて笑った。


「ガッハッハッハハハハ! 大きいか。まあ間違ってはいまい!」


 そう言うと彼は再び酒をあおった。


「お前、(それがし)は魔族だぞ。お前達人間どもの敵だ。それでも怖くはないのか」


 少女はうなずいた。


「ご主人様は敵ではありません。もしワタシの敵がいるとするなら、今までワタシたちの一族を虐げてきた人間達です」


 少女の一族は、皆が戦争に敗れて奴隷にされた一族だった。

 彼女達は生まれながらに奴隷として売られ、何の因果か奴隷商人ごとパンデモニウムの軍勢に捕まったのだ。


 彼女だけではない。

 奴隷にされていた一族の者達は、パンデモニウムの部下達に仕事の仕方を教わりながら、ここでは不思議な共存生活が成り立っていた。


 そんなパンデモニウムの牙城に招かざる来客が訪れた。


「キャハハハハ、何なのココ? 嫌な臭いがあちこちからプンプン漂ってるんだけど」

「何者だ! ここを魔将軍パンデモニウム様の城と知っての狼藉か!」


 少女は笑いながらモンスターを見た。


「あら、口の利き方を知らないのはどちらかしら?」


 そう言うと少女、いや、魔将軍アビスは魔族を一瞬で消し炭にしてしまった。


「お馬鹿さんたちは死ななきゃわからないのかしら、キャハハハ」


 一瞬で仲間を殺された魔族達は魔将軍アビスの歩みを止めようとした。

 だが、彼女はそんな魔族達を触れることも無く一瞬で命を奪う。

 彼女が歩く道にどんどん屍が増えていく。


 そしてついに魔将軍アビスはパンデモニウムの部屋の前に到着した。


「さーて、パンデモニウムちゃんにお話を聞かないとね」


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