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446 魔将軍パンデモニウム

◆◆◆


 ここはユカ達のいる南方とは少し離れた外れにある岩山に作られた魔族の牙城である。

 その中では今、数人の人間の男達が手枷をつけられたまま広い場所に連行されていた。


「オラァ! さっさと歩け!」

「く……くそぉ、なんでオレがこんな目に」

「おれたちをどうするつもりだ」

「俺たちよりもあっちの奴隷の方が使えるだろうに、なんで俺たちなんだ! 俺は貴族の息子様だぞ!」


 どうやらここにいる連中は、奴隷狩りをしていたのがそのまま魔族に捕まってしまったらしい。


「キサマラのことなどどうでもいい、黙って従えばいいのだ」


 男達は殴りつけられ、渋々歩いて魔族について行った。

 そして彼らの到着した場所は、広く開けた牙城の中にあるコロシアムだった。


「こ……ここは、まさか……オレたちに」


 そんな彼らを牙城の上から見下ろす影があった。

「よく来たな!」


 地の底にまで響きそうな大声の主は、日に照らされて逆光の中で顔が見えない。

 だが、その異形の姿は明らかに人間のものではなかった。


「貴様ら、生き延びたいか?」


 異形の男が問いかける。

 彼は上半身に鎧を身に付け、腕は四本、そして下半身は四つ足の獣の姿だった。


「ひ、ひいぃいい!!」

「なんだ、答える事ができないのか? はいかいいえかのどちらかで答えろ!」


 異形の男の声がさらに大きくなった。

 その声は辺りの岩を響かせ、岩の一部が崩れ落ちた。


「なんだ、つまらん。貴様らの生きたいという欲望はその程度か。なら死ね!」

「は、はい! 生きたいです! 生きていたいです!!」


 男の一人が半狂乱になりながら大声で叫んだ。


「ふむ、よかろう。(それがし)は素直な者が好きだ。それが欲望に忠実なら尚更にな!」


 そう言うと異形の男は一振りの剣をコロシアムの中央に投げた。


「さあ、その剣を手に取るがいい、ただし……生き残るのは一人だけだ! 欲望の強い者にその剣と生きる権利をやろう!」


 手枷を外された男達は、仲間同士で殺し合いをした。

 魔族達はそれを見て楽しんでいる。

 仲間を血まみれにして生き残ったのは、貴族の息子だった。


 その戦いぶりは決して美しくなく、むしろその辺りに転がっていた石を使って仲間の頭を原型が無くなるまで叩き潰すような凄惨な有様だ。


「ほう、生き残ったのはお前か。良かろう、その剣を手に取るがよい」

「これで、俺は生き残れる……」


 貴族の息子は血まみれの手でコロシアム中央にある剣を手にした。

 すると、剣から伸びた針が男の手を突き刺した。


「ガッガアアアアッ‼」

「その剣は呪いの魔剣、手にしたものに絶大な力を与えるが、剣に負ければ剣の奴隷になるだけだ」


 苦しんだ貴族の息子の断末魔の声が辺りに響いた。

 そしてその後、男は何も言わずに剣を握っていた。


「キェエエエエエェッ!」

「愚かな、所詮は弱い人間だったか。剣に負けたようだな、(それがし)の部下には相応しくなかったようだ」


 異形の男は城の上部からコロシアム目掛け、一気に飛び降りた。

 獣の下半身がその衝撃を受け止める。

 そして異形の男はその姿を魔族達の前に現した。


「おお、パンデモニウム様だ‼」

「パンデモニウム様の戦いを見る事ができるなんて! オレ達はなんと幸せなんだ」

「我らの英雄、魔将軍パンデモニウム!」

「「「パンデモニウム! パンデモニウム! パンデモニウム‼」」」


 魔族達が喝采を上げていた。

 そう、この異形の男こそ、魔将軍の一人、『パンデモニウム』なのである。


「さあ、剣に喰われし人間よ、(それがし)にかかってくるがいい」

「キェェェェエエエエッッ!!」


 奇声を上げながら剣に乗っ取られた男はパンデモニウムに斬りかかった。

 この呪いの剣は力だけならドラゴンすら一撃で切り落とす剣だ。

 その呪いの剣は、男の体を操り確実にパンデモニウムの首に一撃を叩き込んだ。


「どうした、その程度で(それがし)の首を落とせるとでも思ったか?」


 だが魔将軍パンデモニウムは全くの無傷だった。

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