444 久々の再会に話が弾む
ボクの肩を叩いたのは如何にも凄腕の冒険者といった人物だった。
「久々だな、ユカ」
だがボクはこの人が誰なのかを詳しくは知らない。
『ユカ、その人は冒険野郎Aチームのリーダー、『ハンイバル』さんだ。後ろにいるのはその仲間達。初対面の人も多いだろうから向こうが自己紹介をしてくれるはずだ』
ソウイチロウさんは社会経験があるのだろう。
そういう流れに持って行けば確かにこちらから名前を聞く必要は無さそうだ、あくまでも初対面の人がいるから改めて自己紹介を頼めばいい。
そしてボクの仲間達と冒険野郎Aチームの皆さんはお互いに自己紹介ができた。
「ハンイバルさん、お久しぶりです」
「ユカ。うわさは聞いてるぜ。俺たちが行けなかったヘクタール領に踏み込んであのいけ好かないヘクタール男爵を倒したんだろ」
「はい、ボクの力だけじゃないですけどね。ここにいる皆のおかげです」
そう言ってボクは指の先を大魔女エントラ様やエリアさん達の方に向けた。
「アンタ、凄腕の魔法使いと見たね。アンタもユカの仲間になったのか?」
「そうねェ。妾はエントラ。この国では流星の魔女とか言われるねェ」
「「「‼」」」
大魔女エントラ様の名前を聞いて、ボク達を除くその場にいた全員が一瞬で驚愕した。
「ま、まさか……本当に実在したとは!」
「ひょっとして以前この辺りにいた魔族の大軍を一瞬で全滅させた流星の魔法って……」
「それだけじゃないぞ、あのヘクタール領でのゾンビや大量のアンデッドを一瞬で葬ったのも……」
「そうねェ、全部妾のやったことだねェ」
兵士達だけでなく、騎士と冒険者の全てに至るまでが、その場にひれ伏した。
「流星の魔女様、貴女様のおかげでおれたちは生き延びる事ができました!」
「このご恩は一生かかってもお返しいたします‼」
「どうか、今後も俺達にそのお力をお貸しください!」
大魔女エントラ様は頭をかいて笑っていた。
「そこまで大げさにすることないからねェ。妾はユカと旅をしていると面白いから一緒にいるんだからねェ」
「相変わらずひねくれておるのう。もっと素直になれんのかお前は」
「あら、チンチクリンの少女の姿で嫌味を言っても何も感じないからねェ」
またアンさんと大魔女エントラ様の言い合いが始まった。
「二人共、止めてください。こんな所でケンカしたらせっかくのユカの作った橋が壊れてしまいます」
「あら、エリアちゃん。それは悪かったねェ」
「すまぬ、少しムキになりすぎたわい」
兵士達と騎士たち、それに冒険者の全てがこのやり取りを見て驚いていた。
伝説級の魔法使いと、それに対等に話の出来る少女のアンさん、そしてその二人の言い争いを止めたのはエリアさんだ。
「ユカ、お前凄い人達と仲間になったんだな」
「ハハハ、父さん。父さんほどじゃないよ」
「謙遜してもわかる。お前はもう既にオレより強い。かなりの修行を積んできたのだな」
「父さん……」
今はまだ魔族の大軍はここには姿を見せていない。
この辺りに出るモンスターは言ってもB級の土着モンスターくらいだ。
その程度なら父さんとその仲間で十分にしのぐ事ができる。
「ユカ、母さんは元気か」
「うん、母さんもルーフも元気だよ」
「そうか、この戦いが終わったらみんなで食事をしような。ところで、そちらのお嬢さんは?」
父さんはボクの隣にいたエリアさんを見た。
「はじめまして。私はエリアと申します」
エリアさんは創世神のこととか、古代の遺跡のことには一切触れず、普通の少女のふりをして父さんに挨拶をした。
「ユカがこんな美人さんの友達を作れるとはな。母さんにはもう会わせたのか?」
「う、うん。偶然だけどね」
ボクはその後、父さんや冒険野郎Aチームの人達と一緒に食事をした。
食事はラガハース騎士団長様が糧食の一部を提供してくれたので、全員がきちんとした食事をすることができた。




