438 漁村での合流
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船の数は五隻。
兵士の数は千三百くらいに飛龍と呼ばれるドラゴンが百頭ほど。
まああの船の積載量でどうにかなるだろう。
オレのアトランティス号は少し大きめなので、兵士なら700人は乗れるくらいだ。
「お頭、積み込み作業完了しました!」
「おう、よくやってくれたなー、ありがとよー」
今日の昼間予定外のことが起こったので少し戸惑ったものの、本来の予定よりもスムーズに作業は進んだ。
本来ならこの船には後四百人は乗せる予定だった。
ホームがフランベルジュ領の兵士を連れて来て乗せる計画だったからだ。
だが、ホームはどうやら父親の伯爵の話を聞いて、その計画がムダの多いことに気が付いたらしい。
確かにここから船に乗せるのは最初から予定で組んではいたが、ミクニの武士団の数が予定よりも多かったので嬉しい誤算とはいえ、過積載になる可能性があった。
しかしホームがユカの作った移動できる光る床で冒険者ギルドの町に向かい、そこから漁村に向かえば、足りない船や食料などは漁村やその周辺で確保できる
そういう流れに計画が変更されたことで、船の積載量には余裕ができたというわけだ。
出航が明日として、これならもう少し食料や備品に余裕が持てるので明日の出航は朝ではなく昼過ぎに変更しても問題は無さそうだろう。
「お兄ちゃん、何考えてるのぉ?」
「ああ、マイルかー。いやな、明日の出航をもう少し時間遅らせてもう少し荷物積めないか考えていただけだぜー」
「そうねぇ。船に余裕ができたならもうちょっと食べ物とか積んでもいいしぃ、それに何か娯楽的なものがあっても良いかもねぇ」
「娯楽って、何持ってくつもりだー?」
マイルは何か考えている事があるらしい。
「内緒、明日になったら教えるよぉ」
「そうか、まあ余裕があるならいいんじゃねーか」
確かに船に乗った海の上は退屈だ。
本の一冊や二冊、何かのカードがあるだけでも船員の息抜きにはなる。
ましてやオレ達は今から魔族の大軍と戦うために船に乗るわけだ。
そのためにもコンディションやモチベーションは高くしておきたいと考えてもおかしくはない。
次の日、オレとマイルは船に追加で色々と持ち込むことにした。
酒、タバコ、カードゲーム、それに本と釣竿だ。
まあこれで船の上でずっと退屈をすることは減るだろう。
準備の終わったオレ達はバーレナ男爵や、リバテアの街の人達の歓声で盛大に見送られた。
「よし、出航だー! 目的地は南東の漁村だからな。野郎ども、気合入れるぞ!」
「アイアイサー‼」
オレ達は五隻の船で縦列陣を組んで出航した。
先端のアトランティス号はオレの船。その後ろにマイル、その後ろの船にはリョウカイとミクニの百人長達がそれぞれの船の指揮をすることになった。
リョウクウは飛龍武士団を率いて上空からオレ達の警護をしてくれている。
予定では飛龍武士団は三交代で朝昼晩を問わず警護してくれるようだ。
飛龍は人間よりも感覚が優れているので、夜の見回りは熟練者が、朝や昼は新兵等が受け持つことになった。
オレ達が出航してから一週間。
船はできるだけ陸に近い辺りを座礁しないように進んでいる。
まあ船の航行はオレのスキル、『潮流自在』を使っているので予定からずれることは無い。
たまに大型の鯨やサメ等も出たが、どれもあの赤い大海獣を倒したオレ達の敵ではなかった。
そしてオレ達はそれから特に問題も無く、更に一週間後に予定の漁村に到着した。
「野郎ども、久々の陸地だぜー。少し休んでいいからなー」
オレ達が海から漁村に辿り着いた時には、すでにホームやゴーティ伯爵達が漁村で出港準備を進めていた。
「あ、カイリさん。無事到着したんですね!」
「ああ、特に何も問題は無かったぜー、そっちはどうだー?」
「はい、僕や父上は漁村の村長様のご協力で船を貸してもらうことになりました」
だがそれでも全員移動させるには少し厳しそうだ。
「でもこれで全員移動って厳しくないかー?」
「ですのでここで半分は待機してもらって二往復で南方に向かう予定なんです」
目的地に全員を送り届けるのはまだ先の話になりそうだな。




