437 結局バレてしまった
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ホームはかなり焦った様子で、街中に散らばった兵士達に召集をかけている。
船に乗るのは今晩か明日くらいになる予定なので、そこまで焦ることはないとおもんだがな。
そして小一時間でリバテアのあちこちに散らばっていたフランベルジュ領の兵士達が全員集められた。
「すまない、皆……僕の采配ミスだ。今から一度全員でフランベルジュ領に戻る。僕達はこれから陸路でレジデンス領の東の外れにある漁村に向かう。僕のせいでみんなを振りまわして済まなかった……」
僕は集結した兵士達に向かい、深々と頭を下げている。
「ホーム様、大丈夫です! おれたちはホーム様を信頼していますから!」
「采配ミスって言ったって、単に移動ルート間違えただけだろ、まだ誰もケガしてないし」
「まあ早いうちで良かったじゃん、オレ船苦手なんだよなー」
兵士達は誰も怒っていないようだ、流石は伯爵の息子さんと言ったところか。
「すまない、皆」
ホームは再び頭を深く下げた。
そして彼は船の準備をしていたオレに、事のいきさつを説明した。
「よう、ホームにルームちゃん。すると、おめーらはここからは船に乗らないってわけだなー」
「はい、カイリさん。すみません」
「気にすんなってー、その分詰める食料や物資が増えるんだからよー。こっちとしてはむしろ助かったと言いたいくらいだぜー。いくら船を用意すると言っても数に限りがあるからなー」
「そうねぇ。まあミクニの武士団全員と食料、それに備品と積んだら結構な量になるのよねぇ。ユカ達ももうすぐ戻ってくるだろうしぃ」
本音言うとオレ達も助かったと言いたいとこだ。
ミクニの武士団とリバテアの自警団だけならまだ今ある船と食料だけで十分足りる。
だがそれがもしフランベルジュ領の兵士まで追加となると全員に十分には行きわたらず、不完全な状態で魔族の大軍と戦うことになってしまう。
そう考えると船の調達も漁村の船を使わせてもらえるなら食料や船の問題も分散で解決できる。
その上ゴーティ伯爵の兵士も合流となれば戦力的にはかなり心強い。
「ホーム、気をつけてなー。また漁村で会おうぜー!」
「はい、カイリさん達も気をつけてください」
ホームはオレ達にお辞儀をすると、全員で光る床のあるホテルに戻っていった。
そしてオレ達は出港準備の続きを開始する。
「さてと、それじゃーこっちも出港準備と行きますかー」
「そうねぇ、お兄ちゃん」
「だから外でその言い方はよせって言っただろーが‼」
「ハハハハ」
あーあ、結局オレの部下達にもマイルがオレの妹だとバレてしまった。
「姐さん、おれたちも手を貸しますよ!」
「マイルさんって、綺麗な人だなと思ってたけど、まさか親分の妹さんだったんすね、なんで黙ってたんですか?」
だから言いたくなかったんだよ。
しかし、バレてしまったからには黙ってるわけにはいかないな。
「ああそうなんだぜー、実はディスタンス商会のマイルお嬢さんはオレの妹だったってわけだー。オレは小さい頃、海で流されたところを親父に助けてもらった。でも元々マイルの親父さんがオレの本当の親だったってわけだぜー」
こうなったらもう血縁関係を利用してやるのも一つの手だ。
マイルとオレが兄妹だとなれば、海賊としてだけではなく、ディスタンス商会の関係者としても色々と動きやすくなるってわけだ。
「そうねぇ、お兄ちゃんがあーしと兄妹ならぁ、このディスタンス商会の副会長ってわけになるのかねぇ」
「ハハハ、まあ兄妹げんかだけはしないようにしないとなー。部下達が振り回されることになるからなー」
まあ、結果オーライということにしておこう。
ここから先、オレとマイルが兄妹だと知られていたとして、別にデメリットな事があるわけでもない。
「てめーら、無駄口叩いてる暇あるならさっさと船の積み込み作業済ませろー!!」
「アイアイサー!」
そうしてその日の夕方には、五隻の船全部の積み込み作業が完了した。




