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435 お兄ちゃんと妹

◆◆◆


 次の日、オレは船の出港準備をしていた。

 ミクニの武士団が各船に数百人ずつ乗っていく。


 この後ホーム達が連れて来るはずのフランベルジュ領の兵士達の乗る場所を考えないと、船に乗れる場所が無くなり、寝る場所すら困ることになる。

 そう考えると、船に乗れる人数と、食料などの輸送を考えれば乗れる数を少し削らないといけないくらいだ。


 そういえば、今朝はマイルとリョウクウの姿が見えない。

 ミクニの武士に聞いたところ、昨日二人で夜遅くまで酒を飲んでいたというが、いつの間にそんなに仲良くなったのだろう?


 彼女達が姿を見せたのは、結局お昼近くになってからだった。


「うう……頭が痛いのぉ……。あれ? カイリ何で二人いるのぉ??」


 マイルがまだフラフラしている、これは相当飲んだな。


「カイリ様ー。小生たちならー、船に乗らなくてもー、問題ないですー」


 オイオイ、リョウクウ、お前もフラフラか。


「リョウクウ! 一体何だそのだらしない姿はっ!!」

「あ、兄上。兄上いつから顔が二つになったんですかー」


 リョウカイも妹の体たらくに呆れかえっている。


「オイオイ、二人共ー、まだ寝ぼけてるのかよー、コレでもかぶって目を覚ませー!」


 オレは樽一杯の水を船の上から下の桟橋にいる寝ぼけた酔っぱらい二人にぶっかけた。


「キャッ! 冷たいっ!」

「カイリ様!! 酷いっ、何をするんですか!」

「バカヤロー、てめーら目を覚ませ!!」


 上から冷たい水を浴びせされて、ようやくマイルとリョウクウが目を覚ました


「……はっ! 小生は一体何をしていたのか!」

「あーあ、やっちゃったなぁ。昨日は流石に飲み過ぎたぁ」


 マイルとリョウクウの二人を、オレとリョウカイが腕を組んで睨んでいる。


「リョウクウ、一体何だ、この体たらくは! たるんでいるぞ!」

「ハ、ハハハ。兄上もご機嫌よろしいようで……」

「よろしくない! 今日はお前何もしなくていいから正座して反省していろ!」

「ひえええー、申し訳ありませんー!!」


 いつも凛としていたリョウクウが普段見せない情けない態度を見せた。

 流石にあのカッコ悪さは、彼女の相棒である飛龍のランザンも呆れた目で見ている状態だ。

 まあリョウクウのことは、兄であるリョウカイに任せておけばいいだろう。


 さて、問題はこっちだ。


「カイリぃ? 何その怖い顔はぁ……」

「マイル……。あのなー、言いたいことは山ほどあるがー、とりあえず昨日何があったのかきちんと話してもらうかー?」

「ご、ごめんなさーいぃ! お兄ちゃんーっ!!」


 へっ? お兄ちゃんだって??


「あ、言っちゃったぁ」

「マイル……、いつからそのこと知ってたんだー?」


 どうやらマイルはオレの知らない間に、彼女が本当の妹だってことを知っていたらしい。

 別に怒るわけではないが、それならそうと……知っていると言えばよかったのだが、これは話を聞いてみる必要があるだろう。


 オレはマイルをオレの船の船長室に連れてきた。


「さて、それじゃあいつから知ってたか聞かせてもらうかー」

「うん、わかったよぉ、お兄ちゃん」


 なんだかちょっとくすぐったい感じがするが、お兄ちゃんと呼ばれるのは悪い気がしないな。

 その後、オレはマイルと二人で話をし、いつからオレのことを兄妹だと知っていたのかを聞いた。

 どうやらオレがハーマンと夜中に飲んで話していたのを聞いたとこからだったらしい。

 そう聞くと、確かにあの後からマイルの態度がまるでオレを兄のように接していたことに気が付く。


「マイル、知ってたならそれでもいいけどよー。これから先は隠し事は無しだぜー」

「うん、わかったぁ。お兄ちゃん」

「マイル、二人だけとかならいいけどよー、人の多い所ではお兄ちゃんはよしてくれよ」

「えー、なんでよぉ? もう隠す事ないんでしょ」


 何だか、照れくさいんだが……そういう理由だと伝えるとふくれっ面になりそうだ。


「ダメなもんはダメなんだよー!」

「えー、お兄ちゃんのバカー!!」


 マイルとオレのこのくだらない言い合いは結局夕方近くまで続いてしまった……。

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