432 千五百人以上の勇士達
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僕とルームは千人以上の兵士を再び光る床からフランベルジュ領の領主の館に移動させた。
不幸中の幸いか、兵士達の中にはリバテアの街に初めて行った者も多く、この移動は気分転換になったようだ。
それから一時間ほどして全員が再び領主の館の入り口の広場に集結した。
「皆、少し時間をロスしたけど、船を使うよりは早く移動できるので、これから冒険者ギルドの町に向かう。僕に付いてきてくれ」
僕は全員が揃ったことを確認し、再び光る床で冒険者ギルドの町に向かった。
直接冒険者ギルドの町で全員集合をしても良かったのだが、それでは本当に兵士達が全員いるかすぐには確認できないので、兵士達の名簿のあるフランベルジュ領で全員チェックすることが必要だったのだ。
幸い全員そろっていることが確認できたので移動はスムーズに行えた。
だが流石に、冒険者ギルドの町では今まで部屋から別の場所に移動こそしていたものの、大量の兵士が一か所から出ている異常な光景は無かったので、大量の兵士が部屋から現れる姿には歴戦の冒険者もビックリしていた。
「ホ……ホーム様? これは一体、何の魔法なのですか?? いきなり誰もいない場所から大量の兵士が出てきたのですが……」
この異常な光景を見て笑っているのは、二人の受付の女の子くらいだ。
彼女達は元々あの土地が、ヘクタール領だった時にユカ様や僕達が助けてあげたのであの光る床で移動できることを知っていたからだ。
「これはユカ様の魔法です。あの方は瞬時に移動できる床を作る事ができるのです」
「なるほど、そうだったのですね。それで以前大量の食材を部屋に持ち込んだ理由とかがわかりました」
受付の女性は今までの疑問が解決したようなスッキリした顔をしていた。
「あの……それで、ホーム様。後何人ほど部屋から出てくるのでしょうか?」
「そうですね、ざっと……千人ほどです」
「!!????」
流石に普段冷静な冒険者ギルドの受付嬢も部屋から千人以上の兵士が出てくると聞いて普段見せないような変顔で驚いていた。
「あ……あの、流石に千人分の食事をここでは用意できないのですが……」
「大丈夫です、食材とかは僕の兵士達が持参していますので」
受付嬢はもう無表情になっていた。
これ以上何が起きてももう驚かないと言った感じだ。
冒険者達もビックリしていたが、そんな中の数名が僕に話しかけてきた。
「あのよお、もし良かったら、おれたちも参加させてもらってもいいか?」
「はい、大歓迎です。それでは最後尾が到着したらその後ろに付いてきてください」
「はい、わかりました! ホーム様」
すると、僕の後ろに六人の男達が姿を見せた。
「すみません、こんな事を言えた義理ではないのですが、俺達も参加したいのですが……」
彼らは元ヘクタール男爵の兵士達で、ユカ様にボコボコにされて改心した人達だ。
「勿論です、一人でも多くの仲間が必要ですから」
「ありがとうございます。これまでの罪滅ぼしに一匹でも多くの魔物を倒してみせます!」
元兵士の中には泣き出す人までいる始末だ。
「そんな大げさな。今は皆魔族の大軍と戦う仲間ですよ」
「はい、ホーム様。おれたちの命、全て貴方様に捧げます!!」
そう言うと彼らはヘクタール男爵の部下だった時の武器防具を冒険者ギルドのスタッフから受け取り、装備した。
「冒険者ギルドもこのミッションには特例で、ランク関係なしに仕事として依頼します。魔族の大軍を倒す人達はこちらに集まってください」
すると、飲み食いをしていた冒険者の大半が受付に殺到した。
フランベルジュ領からの兵士が千人以上、それに追加で冒険者ギルドからさらに三百人前後。
これだけの数がいれば、魔族の大軍勢にも対抗できそうだ。
冒険者ギルドからは街を守る自警団と、別依頼での街の防衛で残る人以外の大半が僕の軍勢に参加してくれた。
現時点で、僕が数えられるだけで……魔族と戦う者達の数はここにいる人達全部を合わせると千五百人を超えた。




