424 戦力の確保と物資、運搬の調達
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僕達はユカ様の作ったワープ床を使い、冒険者ギルドの町に向かった。
「さて、僕達は最初にするべきことは、数千、下手すれば数万いる魔の大軍と戦う仲間を集めることだね」
「その通りですわ。まずはお父様に援軍をお願いしましょう」
「いや、それはいきなり言うことではないよ。それはあくまでもこれだけの戦力が集まったので、良ければ協力をお願いしますと頼むべきこと。最初から行けばどれだけの戦力を出していいのかわからない上、下手すれば手薄になった城や領地が攻められる可能性もある」
相手が知性の無い魔物だけなら確かに全戦力で戦う選択肢もあるが、相手には魔将軍と呼ばれる魔族を仕切る指揮官がいる。
敵が頭の無い奴ならそこまで苦労はしないが、あのマデンという魔族のことを考えると、魔族はかなり狡猾で僕達の動きを呼んでくる可能性が高い。
そう考えると分断作戦は常套手段だともいえる。
「そうだぜー、一気に戦力を投入するとその手薄な場所から攻められる。オレが悪徳商人の船を襲った時のやり方もそうだったからなー。別動隊で攻めてくる可能性は十分に考えられるってわけよー」
「そうよねぇ。商売の話でなんだけどぉ、オトリを用意して目線をそらしながら本当の目的を達成するなんてのは日常茶飯事といえるわぁ。そう考えると、今は広く浅く仲間を集める方が得策だと思うのよねぇ」
マイルさん、カイリさんはどちらも自身の経験からの分断作戦やオトリの可能性を指摘してきた。
今すぐここからワープ床で父上に戦力の要請を頼むのは可能だ、父上も状況が状況だと言ってそれなりの戦力を出してくれるかもしれない。
だが、今はそれよりも広くの地域で戦力を集める必要がある。
幸いユカ様の作ったワープ床はこの部屋にいくつかあり、父上の城、フランベルジュ領のカンポの村、フランベルジュ領の屋敷、自由都市リバテア、ミクニの城といった場所に瞬時に移動可能だ。
特に一番期待できるのはミクニの武士団だろう。
彼らは少し前まで実践で戦争をしていた歴戦の戦士達だ。
「皆さん、僕達はまずどこに行くべきだと思いますか?」
「そうだなー。まずはオレがリバテアに行くべきかなー。南方の橋が使えないとなると船が必須になる。それなら少しでも早く船を用意しないといけないからなー」
「そうよねぇ。あーしもリバテアに向かうわぁ。戦いの中で何も飲まず食わずで戦えるわけないからねぇ。商会の力と、リバテアの統治者バレーナ男爵様に頼んで武器弾薬、食料を確保しておくわぁ」
これで決まった。
カイリさんとマイルさんはリバテアで移動用の船と必要物資を調達。
その間に僕達はミクニ、フランベルジュ領、そしてこの冒険者ギルドの町、それらの戦力確保が終わった上で父上に協力をお願いすることにした。
「決まりましたね。それではマイルさん、カイリさん、どうかよろしくお願いします」
「あー、任せなー。そっちも戦士達を集めるの期待してるぜー」
「はい、承知しました!」
そしてカイリさんとマイルさんはワープ床を使い、自由都市リバテアに向かった。
「お兄様、私達もそろそろ動かないと」
「そうだね、まずはミクニに向かおう」
「ミクニ……ですか? それよりもせっかくこの町にいるなら冒険者ギルドの方が先でいいかと……」
「ルーム、ミクニの人達は遠くから呼んでくるから、少しでも時間が早い方が良いんだよ。今は時間があまり無いからね」
「承知致しましたわ。お兄様、それではミクニへ向かいましょう」
「うん、急ごう!」
僕とルームはワープ床を使い、海を隔てたはるか遠いミクニの地へと一瞬で移動した。
僕達は城内の宝物庫の中に移動し、内側から扉を叩いて開けてもらうように頼んだ。
「僕はユカ様の仲間の『ホーム・レジデンス』です。ここを開けてください!」
僕達の声を聞いた警備の番兵はすぐに扉を開き、僕とルームを三人の王様の元に連れて行ってくれた。




