419 もう少しだけ時間を
「ユカ様、お話とは一体どういうことでしょうか?」
「ゴーティ伯爵様、実は南方に大量の魔族の大軍が押し寄せていることはご存じでしょうか?」
「存じております。ラガハース騎士団長からも報告を受けておりますし。今ラガハースの騎士団は南方に到着後、橋を建設中だと聞いております」
『ソウイチロウさん、ラガハース騎士団長って誰ですか?』
『ユカ、ラガハース騎士団長はゴーティ伯爵の後輩で現騎士団の団長だ。ゴーティ伯爵は前騎士団長だった人物だ』
『そうなんですね。教えてくれてありがとうございます』
つまり、今の騎士団長のラガハースさんが、南方に向かい、今は橋を建設しているというのが現状らしい。
「ゴーティ伯爵様、実は……南方の地域に魔族の大軍が出現するというのです。その数は数千以上、下手すれば数万の大軍が押し寄せてくるのです」
「それは聞き捨てなりませんね、帝国の危機ともいえます。ですが、私はこれでもこの土地を預かる身、死ぬとわかっていて兵士を戦地に送り込むことはできません」
ゴーティ伯爵はやはり優れた領主だ。
「私は税金を納めてもらう代わりにこの土地を安全に守ることを義務付けられています。だからと望まぬ者を兵士として駆り立てて死地に赴かせることは私の信条に反します。しかし、ユカ様の言うことも理解はできます。もう少しだけ時間をいただけますか?」
ゴーティ伯爵は、勇士を募ろうというのだろう。
どれだけの人が数万の大軍に立ち向かうというのかはまだ想定できない。
「ユカ様、書類が整いました。これでリゾート氏を男爵に任命することができます」
「ゴーティ伯爵様、ありがとうございます!」
ボクは男爵任命の書類を受け取り、深くお辞儀をした。
「それではボクは急ぎます。この後でホームさん、ルームさんが来るかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」
「わかりました、ユカ様もお気をつけて」
ボクは挨拶をすると、再び物置小屋に向かった。
そこから再びワープ床を通り、冒険者ギルドの町のボクの部屋からリゾートさんの屋敷に向かった。
「早くこれを渡さないと!」
ボクはみんなの待つ食堂に向かった。
みんなが料理を前にボクの到着を待ってくれていた。
「ユカ、お帰り」
「料理が少し冷めてしまったぞ」
「ゴメンみんな、ゴーティ伯爵様から書類を受け取ってきたよ」
ボクの話を聞いたリゾートさんが驚いていた。
「ゴーティ伯爵様!? ここから数週間は歩かないと会えないはずなのに……一体ユカ様はどんな魔法を使ったのですか??」
「すみません、話せば長くなります。とりあえず一旦こちらをお受け取りいただけますか?」
「これは……! 間違いありません、ゴーティ伯爵様の直筆、それにこの証書は間違いなく帝国の公式書類です……それで、何と?」
ボクは封緘をリゾートさんに封緘を開いてもらった。
「これは……『リゾート・ローカル』を正式にグランド帝国の男爵に任命する。ゴーティ・フォッシーナ・レジデンス伯爵……まさか、私が男爵に!?」
驚いたリゾートさんは思わず書簡を床に落としてしまった。
「はい、これはゴーティ伯爵様に書いていただいた正式な書類です。」
「にわかには信じられませんが、どうやら本物のようですね。しかし、私が男爵になって何をすればいいのでしょうか?」
「そうだねェ。今この領地はバスラ伯爵のせいで滅茶苦茶にされた挙句、住民が重い税金に苦しめられているからねェ、それを領主として住民が生活できるようにしてあげることだねェ」
「……わかりました、私も貴族の端くれです。この土地の統治、やり遂げて見せましょう」
「決まりだねェ、それじゃあ食事が終わったら移動するかねェ」
ボク達はリゾート男爵の用意してくれた食事をいただいた後、彼を連れて町に向かうことにした。




