415 ゴミは片付き花畑が残る
グリードスライムは跡形も無く消滅した。
そして浄化された光は次々と天に昇っていく。
浄化の光に苦しんだ魔将軍アビスは、ボク達の知らないうちに姿を消していたようだ。
「まあこういう光景が後世で伝説になったりするんだねェ」
「ふむ。さしずめ、女神の力で報われぬ魂が救われたというべきじゃのう」
「皆さん、そんなに大げさに言わないで下さい」
しかしこの光景は後の世界に伝説になってもおかしくはない。
エリアさんの力が創世神の半分だとするなら、浮かばれない魂が浄化されるのも納得だ。
それほどエリアさんの力は巨大だと言える。
「まあこれでこの辺りも平和になるのかな」
「そうだろうな。悪徳領主がスライムに飲み込まれて全部きれいさっぱり無くなってしまったわけだからな」
「そうなると、領主不在のこの辺りは、別の領主が送られてくるのでしょうか」
「まあそうだろうねェ。とりあえずはゴーティの坊やにでも聞いてみると良いかもねェ」
ボク達はこの辺りで巨大スライムに襲われた人達を助けるために急いで駆け付けた。
しかし、ボク達は巨大スライムに取り込まれた人を助けることはできなかった。
『ユカ、ひょっとしてあのグリードスライムに飲み込まれた人達を助けれられなかったことを悔やんでいるのか?』
『ソウイチロウさん、悔しいです。ボク達がもっと早く来れていれば、あの人達はグリードスライムに殺されることは無かったんです』
『ユカ、なんでも全部背負い込もうとするな。確かにグリードスライムに襲われた人達は助けられなかった。しかし、ユカはこれ以上凶悪化してグリードスライムに襲われるはずだった人達を助けるととができたんだ。ユカは自身のできることをした、それは誇っていいことなんだぞ』
ソウイチロウさんがボクを励ましてくれた。
「ユカ、私……行かなくてはいけない場所があります。ついてきてくれますか」
「うん、エリアさん。わかった」
「エリア嬢……いや、創世神えいーた様、どうぞワシの背にお乗りください。行きたい場所に連れて行きましょう」
アンさんがエリアさんへのしゃべり方を丁寧に変えていた。
「イオリ様、そんなにかしこまらないでください。今まで通りで大丈夫ですから」
「ふむ、そうか。では普段通りのしゃべり方にさせてもらおう。エリア嬢、ワシの背に乗るがよい」
ボク達はアンさんの背中に乗せてもらった。
「それで、エリア嬢。どこへ向かえば良いのじゃ?」
「ここから東南東、一面の花畑のあるあたりです」
一面の花畑。それはボク達が古代兵器タルカスを倒したバスラ伯爵の元ゴミ集積所のことだろう。
「わかった、しっかり掴まっておるがよい」
アンさんはボク達を乗せると凄い速さで元ゴミ集積所に向かって飛んだ。
そして小一時間もせず、ボク達は元ゴミ集積所の花畑に到着した。
「ここにはまだ多くの浮かばれない魂が漂っています」
やはりボクの力だけでは魂まで救うことはできなかったようだ。
そしてエリアさんは大きく手をかざし、光を解き放った。
「この地に漂う哀れなる魂よ、さあ。元ある場所へ還るのです。レザレクション!」
エリアさんの魔力は目に見える範囲全てを覆い尽くし、その温かい光は元ゴミ集積所の花畑に降り注いだ。
「ああ……あれは。光が……」
「あの光に向かえば……おとさん、おかさんにあえるの……」
「アナタ……今そちらに向かいます」
「アリガトウ……アリガトウ……」
温かい光は花畑の下に埋もれていた魂を呼び起こし、その魂は全てが天に昇って行った。
「流石だねェ。創世神じゃなきゃあれだけの魂を救うことはできないねェ」
「そうじゃな、ワシは長年生きておるが、あれほどの力を見るのは初めてじゃ」
「魂は天に還る、俺の一族の掟は間違ってはいなかったのだな」
そして、最後の光が天に上った時、辺りはすっかり夕方になっていた。
「キレイ……夕日に照らされた花畑が……とてもキレイです」
力を使い切ったエリアさんは、普段のエリアさんに戻っていた。
「そうだね、ボク達が作ったお花畑。もっとたくさんの人に見て幸せになってもらおう」
「うん、ユカ。頑張ろうね」
エリアさんの笑顔が、花畑の花に照らされてとても美しかった。




