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414 大魔女と龍神と女神

 エリアさんの力で浄化された巨大スライムは、半分ほどの大きさになっていた。


「どこまでも捕食同化して巨大化するスライムねェ。さしずめ強欲グリードスライムって言ったところかねェ」

「名前なんてどうでもよいじゃろうて、あんなものブヨブヨのバケモノで十分じゃ」


 大魔女エントラ様とアンさん、この二人は仲がいいのか悪いのかが本当にわからない。


「まあもう一人のユカが言ってたように、アイツは触れたらそこから同化されるからねェ。下手に手でも足でも触れられたらそこを即座に斬り落とさないとねェ。その上で再生させればいいかねェ」

「まるで蜥蜴の尻尾じゃな。たわけ、普通の人間にそんな事ができるわけなかろう、斬り落としたが最後もう復活はせんのじゃぞ」


 軽く冗談を言っているが、この二人は攻撃するタイミングを伺っているようだ。


「どうやらこの辺りは(わらわ)達以外はもう誰もいないようだねェ」

「残念じゃがそのようじゃな。あのバケモノに同化された時点でワシらが駆け付けた時にはここにおった者達はもう命は奪われておった」

「私は、せめて哀れな魂を一人でも多く救います。あなた達はこれ以上の犠牲者を出さないようにあのおぞましい怪物を消滅させてください」


 エリアさんは退治や討伐とは言わず、怪物を消滅させてほしいと言っていた。

 つまり、大魔女エントラ様やアンさんはあのグリードスライムを倒せると言っているのだ。


「俺も協力するぞ。精霊ならあの怪物を切り裂ける上、同化もされない。オソイがそう言っているのだ」

「フロアさん、それは本当ですか!」


 フロアさんの使役している白い魔獣オソイは実体を持たない精霊みたいなものだ。


『ユカ、フロアの言っているのは本当だ。霊体は一方的に攻撃はできるが、あのスライムの物理的同化は受け付けない。それならフロアの精霊にもあのスライムを切り刻んでもらった方が良いだろう』

『ソウイチロウさん、わかりました! そう伝えてみます』


 ボクはフロアさんに頼んだ。


「フロアさん、ボクに作戦があります。まずエントラ様とアンさんが風の魔法でスライムを大きく切り刻んで、その後でフロアさんの白い精霊で細かくバラバラにしてください」

「わかった、そのやり方でやってみよう」

「ふむ、ではワシは突風であのバケモノを斬り刻めば良いのじゃな」

(わらわ)も風の魔法なら使えるからねェ」


 大魔女エントラ様とアンさんは魔力を集め、空中のバリアフィールドに固定されたグリードスライム目掛けて風の魔法を放った。


「吹き荒れよ大旋風! 紫電狂飆(しでんきょうひょう)!」

「アイオロストルネード!」


 二人の強大な魔法はバリアフィールドを砕き、紫と青の突風が巨大なグリードスライムを粉々に切り刻んだ。

 地面に落ちるとそこから再び同化を始めるので、吹き荒れた突風は常に空中でグリードスライムを切り刻んで地面に落ちることを許されなかった。


「白き精霊オソイよ! 眼前の敵を切り刻め!」

「我が主よ、お任せ有れ!!」


 突風の中に実体の無い白い獣が飛び込んだ。

 白い獣オソイはその鋭い爪でグリードスライムをバラバラに切り刻んだ。

 実際は爪で切り刻んだのではなく、爪の動きに合わせて空気の流れが動き、その突風が鋭い刃となってグリードスライムをバラバラにしたようだ。


「ここまでバラバラになったらそう簡単には復活できないからねェ! プロテクトフィールド!」


 大魔女エントラ様は自身とグリードスライムを同じ巨大な光の膜の中に包み込んだ。


「ここなら逃げ場はないからねェ。喰らいな、プロミネンス・ノヴァ!」


 巨大な炎の柱がバラバラになったグリードスライムを焼き尽くした。


「欠片すら残さないからねェ! 全て燃え尽きるんだねェッ!!」


 巨大な炎の柱はその後も数十分に渡ってグリードスライムを完全に焼き尽くした。

 プロテクトフィールドが消え去った時、その場にはグリードスライムは欠片も残っていなかった。


「後は私がやります、浮かばれない哀れな魂よ、天に、大地にマナとして、力として還りなさい……レザレクション!」


 エリアさんの浄化の光は、ボクの目に見える範囲全てを覆い、暖かな光が辺り一面に降り注いだ。

 そして、次々と光の粒となって多くの魂が天に昇って行った。

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