412 とりあえず二手に分かれよう
◆◇◆
このままでは数万を超える魔族の大軍勢にみんな殺されてしまう。
「ユカ様、それではボク達はフランベルジュ領を経由して南方に向かいます」
「南方に着いたら待っててくれよー、オレが船を調達して追いつくからよー」
「後方支援ならあーしに任せてねぇ。商会総出でバックアップするからぁ」
ホームさん、ルームさん、カイリさんとマイルさんはここからワープ床を使ってフランベルジュ領、ゴーティ伯爵のレジデンス領に向かい、応援要請を頼む形だ。
「それで妾はエリアちゃんの半身を復活させるために調べものをする形だねェ」
「俺も南方にそのまま向かえるならフワフワ族の集落に寄って、サラサに頼んで戦士達の力を借りることにする」
「しかし山を越えねばならぬのじゃろうて、ワシが背中に乗せてやろう。わーぷ床とやらでは行けぬ場所のようじゃからの」
アンさんは紫の巨大なドラゴンの姿になって空を飛ぶことができるので、南方に向かうのはそれほど難しくないようだ。
「皆さん……大変です! 今、ここからそう遠くない場所で、数多くの命が一瞬にして失われてしまいました」
エリアさんが頭を抱えながら悲痛な表情をしている。
「ふむ、何やら邪悪な気配を感じるのう」
「これは……急がないと大変なことになりそうだねェ」
この感じだとボク達も急いで出かけないといけないようだ。
『ユカ、どうやら急がないと、何かまたあの魔将軍アビスとかいうのが暗躍しているようだな』
『ソウイチロウさん、なぜそれがわかるのですか?』
『長年シナリオとかゲーム作ってると、大体のキャラの特性から行動パターンが読めるようになるのさ、あの魔将軍アビスってのは自己顕示欲の高いサディスト、それも効率よりも自身の快楽を優先するタイプだ』
ソウイチロウさんの分析からすると、魔将軍アビスが動いているのは間違いなさそうだ。
「このままではどんどん罪の無い人達が犠牲になってしまいます」
「エリアちゃん、そうだねェ。今はエリアちゃんのルーツを探るよりも人助けをするべきだねェ」
「エントラ様、ありがとうございます」
「神様に頭を下げられるなんて、妾も偉くなったのかねェ」
「えんとら、たわけたことを言っとらんでさっさと動くぞ」
ボク達はホームさん達を見送ってから、エリアさんの言う方向に向かうことになった。
「ユカ様、それではまた南方で会いましょう」
「私達は必ず援軍を連れて南方で待っていますわ」
「そうだね、ホームさん、ルームさん、気をつけてね」
そしてホームさん達はワープ床で冒険者ギルドの町に向かった。
「さて、ボク達も出かけよう! 急がないと」
「ふむ、ではワシの背に乗るがよい、ぬうう!」
アンさんは紫の巨大なドラゴンに姿を変えた。
「妾は自分でどうにかできるけどねェ」
そう言うと大魔女エントラ様はクリスタルドラゴンを呼び出し、その背中に乗った。
「ふむ、ワシの速さに遅れるでないぞ」
「アンタこそ、遅れないようにねェ」
「皆さん、邪悪な気配はここから……東南東の方角から漂ってきています」
「うむ、では急ぐぞ!」
ボクとエリアさん、アンさん、大魔女エントラ様、それにシートとシーツの双子の狼二匹はエリアさんの示す方角目掛け、空を飛んで向かった。
「な、何じゃあれは!!?」
「どうやら巨大なスライムのようだねェ」
空を飛び駆けつけたボク達の目の前に存在したのは、小さな山にも匹敵する大きさのスライムだった。
「何というデカさじゃ」
「残念だけどこの辺りにいる生き物は全滅だねェ。今からじゃどう考えても助からないねェ……」
巨大スライムは、山にあった小さな村全てを飲み込み、そのスライムの中では家畜や逃げ遅れた人達がどんどん溶かされて骨になり、飲み込んだ巨大スライムの一部にされていた。




