407 エリア=エイータ
ボク達の見ている前で、魔将軍アビスとバグスの二人はあっという間に姿を消した。
「ああいった演出が好きなのは前の人生と変わらないな。あの人はそういう人だった」
「ソウイチロウさん、あの人とは一体誰のことなのですか?」
ボクは頭の中のソウイチロウさんに話しかけた。
「ユカ? 一体貴方は誰に話をしているのぉ?」
マイルさんがボクを不思議そうな目で見ていた。
そう言えばみんなにはソウイチロウさんが見えないのだ。
これではボクが誰もいない所で独り言を言っているようにしか見えない。
『ユカ。私との会話は頭の中で念じればいい、私も君の頭の中にだけ聞こえるように返答するから』
『わかりました、ソウイチロウさん』
ボクはどうにか誤魔化すことにした。
「い、いやね。まだアイツが何かを残しているんじゃないかと試しに声をかけてみたんだ」
「ユカ様、そうでしたのね。でももう何もいないみたいですわ」
どうにかこの状況をごまかすことができた。
「しかし困ったことになったのう、万を超す魔の大軍勢じゃと。これは一度ミクニの者達にも協力してもらう必要がありそうじゃな」
「フワフワ族の戦士達にも協力を頼もう。俺から頼んでみる!」
「じゃあオレは手下達総動員して物資の調達と行くかねー」
「あーしもリバテアの商会総動員でバックアップするねぇ」
みんながそれぞれ今までに出会った人達への協力を申し出てくれるようだ。
『ユカ、覚えておくといい。これが“情けは人のためならず”だ。人のためにやってあげた良いことは誠意をもって接すれば、必ず自身が困った時に助けになる』
『ソウイチロウさん、わかりました。それで、ボクはこの後どうすれば良いのですか?』
『そうだな、私達は一度冒険者ギルドに戻って応援要請を出そう。その上で全員をワープ床を使ってリバテアに集めるんだ』
流石ソウイチロウさんは長年色々とリーダーをやってきただけのことはある。
ボクに的確に動けるように指示してくれているのだ。
「でもこの辺りのバスラ伯爵のゴミ掃除も必要だねェ。それは妾がやっておこうかねェ」
大魔女エントラ様はここに残ってバスラ伯爵の残党を始末すると言ってくれている。
「私もここに残ります。ここには浮かばれない魂がまだまだ多く残っているのです」
「エリアちゃん? これまたずいぶんと雰囲気が変わったねェ。そろそろ自分が何者か思い出せたんじゃないかねェ」
「はい、私は自分が何なのかを思い出しました。私の本当の名前はエリアではありません。私はエイータ、創世神……『クーリエ・エイータ』の半身です」
この発言にその場にいた大半の人が驚いた。
驚かなかったのはアンさんとエントラ様だけだった。
「やはりのう。その神力、やはり只者ではないと思っておったわ、しかしまさかエリア嬢が創世神だったとはのう」
「ハッハッハ、創世神様、そりゃああれだけの魔力もスキルも納得だねェ」
エリアさんは、なんと創世神だった。
「しかし、エリア様、いえ、創世神エイータ様。なぜ貴女は記憶を失っていたのでしょうか?」
「今まで通りエリアで良いですよ。ホームさん、それには深いわけがあります」
そう言うとエリアさんは昔のことを話し出した。
「私は古き時代、この世界を作り……平和な世界にしました。しかし光が大きければその分、生まれる闇もまた大きくなります。私が光あふれる世界を作ったことで、破壊神もまた力を大きくしていったのです」
「破壊神! それは一体何者なのですか?」
「皆様にその名を伝えることはできません。なぜなら破壊神は封印されている者、しかし……もしその名を誰かが呼ぶことがあれば、破壊神は再び存在を認識され、この世界に戻って来てしまうからです」
その後も創世神であるエリアさんの話は続いた。




