403 初めての認識
黒い塊の中からは吸い込まれたはずの大魔女エントラ様が現れた
「そうはさせないからねェ!」
「なッ!!? なぜ吸い込まれたはずのエントラがァ!?」
「アンタと話すことはないねェ!!」
バグスがうろたえている。
その後ろを狙い、ボクは背中から切り付けた!
「でやああーっ!!」
「なっ!? ユカがもう一人ィ!???」
バグスは突然のボクの出現に驚いていた。
驚いたバグスだったが、ボクの剣は残念ながら致命傷にはならなかった。
しかしその攻撃はバグスの行動を止めるのには十分だった。
「邪悪なる者よ、退け!」
とても透明感のある、しかし力強い声が黒い塊の中から聞こえてきた。
そして、銀髪の美しい少女が現れ、バグスに向かって手をかざしていた。
「エリアさん?」
「エリア様、無事だったのですね!!」
どうやらあの少女はボクの仲間みんなが知っている人物のようだ。
「な……この力は、まさか!? エイータ、覚醒したというのかァ」
エリア? エイータ? ボクは状況がわからないまま、銀髪の少女のことを見ていた。
「この世界の者ならぬ邪悪なる者よ、ここは貴方のいる場所ではありません」
「煩いんだよォッ! いつもいつもボクの邪魔をしてさァッ!」
バグスが激昂している。
だが彼の魔法は全てエリアの前で消滅していた。
「無駄です。この世界の理を捻じ曲げる者よ。退きなさい」
「クッソォオオオッ!! この屈辱、絶対に忘れないからなァ!!」
バグスは悔し紛れにその場を退いた。
「エリアちゃん、もう限界だねェ! この場所に居られるのもそう長くはないからねェ」
「はい、では彼を連れて戻りましょう」
そう言うとエリアという少女はボクの方を見た。
「貴方の時を戻します。さあ、私の手を握ってください」
「でも、あそこに倒れているもう一人のボクはどうするんだよ!?」
「大丈夫です、あそこにいる貴方は自然な時の流れに従い、これから先の貴方になります」
言っている意味が分からない。
しかし問題がないなら従った方が良さそうだ、今は時間が無い。
「そして、そこの貴方も……私に付いてきてください」
エリアは何もない方に手を差し伸べた。
そこにはボクの見えない誰かがいたのだろうか?
「では……私が時を戻します!」
エリアさんが大きく手を掲げると、黒い塊は消え去り、真っ白な光の塊が現れた。
そしてボク達はその中に全員が飲み込まれた。
◆◆◆
「ここは……時渡りの神殿?」
「どうやら気が付いたようだねェ」
「どうにか無事、全員戻ってこれたようですね」
ボクの目の前には大魔女エントラとエリアさんがいた。
「ユカ様!?」
「エリアさん、無事だったのですね!」
「ほう、えんとら。久々じゃのう」
時渡りの神殿に戻ってきたボク達は、その場に残っていた仲間に再び会う事ができた。
「どうにかこれで全員揃ったようだねェ」
「いいえ、まだする事が残っています」
そう言うとエリアさんはボクに何かの魔法を使った。
「え?……」
ボクは眠くなり、その場に倒れ込んでしまった。
「エリアさん? 一体何を?」
「まあ黙って見ているんだねェ。これはユカが元に戻るために必要なことだからねェ」
周りの声が聞こえる、しかしボクの身体は下に寝ている状態だ。
どうやらボクは、魂だけの状態になったらしい。
あのエリアさんは一体何をしようというのだろうか。
すると、ボクの目の前にもう一人姿の見えない誰かがいるように感じた。
「誰? ひょっとしてあなたがバンジョウソウイチロウさん?」
「そうです。そういう貴方はユカなのでしょうか」
ボクとソウイチロウさんはこの時初めてお互いの存在を認識した。
この人が、ボクの身体で旅をしていた人なのか。
ボクが話した感じ、彼は敵対的な人ではなさそうだった。
そして、ソウイチロウさんはボクに話しかけてきた。




