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402 二人のユカ

ボクの目の前に見えたのは、赤い怪物と戦うソウイチロウさんの入ったボク、それと仲間達だった。

 そのはるか上空に姿を現したのが、謎の薄闇色のローブの男だった。


「ここまでやられると後々困るんだよォ……まさかレッドオクトまで倒そうとはねェ」


「お前は! バグス!!」

「おや、ボクの名前を知られてしまったのかァ。せっかく隠してたのにィ。マデンのバカがァ!!」


 どうやらアレがソウイチロウさんとボクを分けた男らしい、彼はバグスと呼ばれた薄闇色のフードの男だった。


「どうやらこの世界の異分子はキミの事ってわけかァ」

「何を言っている!」


 バグスは睨みつけるような視線でソウイチロウさんのボクを見つめていた。


「そうかァ……そういう事だったんだなァ」


 バグスはそう言うと、空中に黒い塊を作りだした。

 あの黒い塊がボクとソウイチロウさんをバラバラにしたもののようだ。


「どうやらこの世界の異分子を取り除かないとォ、今後も計画が潰されそうだなァ」


 バグスの黒い塊がソウイチロウさんのボクを包み込んだ。

 このまま見ているだけでは同じことが繰り返されるだけだ。


「ぐぁあああー!!」


 だが、ボクの目の前で、ボクの姿のソウイチロウさんは黒い塊に包み込まれてしまった。


「ぐああああああ!!」

「アッハハハハァ。今度こそさようならだよォ」


 もう一つのボクの身体が黒い力で、意識と引き裂かれようとしている。


「今まで散々煮え湯を飲ませてくれたキミは邪魔だからねェ。消えてもらうよォ」

「くッ! そうはさせないねェ!!」


 大魔女エントラ様らしい人物が、魔法を使おうとしていた。


「うっとうしいなァ! 邪魔するんじゃねェよォ!!」


 バグスは黒い塊を大魔女エントラ様に放とうとした。


「ディスペルフォース」


 魔力無効化の魔法が黒い塊を消し去った。


「ユカ、今助けてあげるからねェ」


 大魔女エントラ様が杖を掲げた。

 だが、赤い怪物がその杖を絡め取ってしまった。


「くッ、まだ生き残ってたのねェ。しぶといヤツだねェ」


 バグスが再び手を大きく上げた。


「そうだ、ゲートがキミのことをジャマだと言ってたよォ。そこの異分子と一緒にキミもこの世界から消えてもらうよォッ!!」


 バグスは両手を広げて黒いエネルギーの塊を渦にした。

 それはまるで……全てのものを吸いこむ巨大な真っ黒の底無し沼のようだった。


◆◆◆


 大魔女エントラが異空間と元の世界とをリンクさせようとしている。


(わらわ)の一族は異界の門を守る一族。しかしまさか異界から元の世界に戻るための穴を作ることになるとはねェ」


 ここは大魔女エントラに頼るしかない。

 彼女以外にこの異空間から出る方法が使えるのは、この三人の中ではいないのだ。


「開け、異界の門!」


 大魔女エントラの魔力をもってしても、異空間から元の世界への門を開くのは相当難しいスキルのようだ。


「くううゥ。思った以上にハードなようだねェ!」


 大魔女エントラの魔力が思った以上に激減しているようだ。

 その時、エリアが大魔女エントラの手に触れた。


「!! これは、なんという絶大な魔力、やはりアンタは女神様なのかもしれないねェ!」


 大魔女エントラの身体に魔力が満ち溢れる。

 そして大魔女エントラは、元の世界の時空間に門を作ることに成功した。

 その場所は、私達が大海獣レッドオクトと戦っていた時間軸だった。


◆◆◆


「ぐぁああ、心が……もっていかれるぅう」


 このままでは、ソウイチロウさんの心があの黒い穴に吸い込まれてしまう。

 ボクは思わず飛び出した。


「ボクの目の前に坂道を作ってくれ!」


 ボクはマップチェンジで作った坂道をバグス目掛けて駆け上った。


「ハハハハァ、ついに……これで世界の破壊に取り掛かれるよォ! もう邪魔者はいない」

「アンタ! ユカに何をしたのかねェ!!」

「そうだァ。キミもこの世界から消えてもらおうかァ!」


 もう一人のボクは力尽きてしまい、その場に倒れてしまった。

 そして黒い塊が大きくなり、その場にいるみんなを包み込もうとした。


 その時! 黒い塊の中に人影が見えた。

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