397 ゲームの概念の説明
「ソウイチロウ?」
どうやら前世の私のことを知っているのは大魔女エントラだけのようだ。
「エリアちゃん、今から説明するからねェ」
「はい、エントラ様。どういうことなのでしょうか?」
「エリアちゃん、人間には、いや……生き物は何度も生命を繰り返しているってわかるかねェ?」
「いえ、いまいちよくわかりません」
大魔女エントラの言おうとしてるのは輪廻転生のことだろう。
「つまりだねェ。ここにいるのはユカであってもユカではない、ユカの前の人生の時の人格と記憶というわけだねェ」
「そうなのですか、それが……ソウイチロウ……さん?」
エリアはどうも状況が理解できてないようだ。
「そういうことだねェ。ここにいるバンジョウ・ソウイチロウが、今までアンタ達がユカだと思って一緒に旅をしてきたってわけだねェ」
「それでは、本当のユカは!?」
「その言い方は少し違うかねェ。ここにいるのが偽物ってわけじゃあないからねェ。ここにいるのはユカが前の人生だった時の人物、つまりは前の人生のユカってわけ」
その説明でエリアが理解できるのだろうか?
「わかりました。ここにいるのはユカになる前のソウイチロウさんという方なのですね」
まあ、その理解で今は良いかな。
これ以上説明するとややこしくなってしまう。
「そういうことだねェ。ではソウイチロウから今までのことを説明してくれるかねェ」
大魔女エントラは私に今までの自身を説明しろと言ってきた。
「エリア……さん。私はユカ・カーサの前世、つまりユカになる前に生きていた板上創一郎と申します。今まで騙していて申し訳ありません」
「い、いえ……騙されたとか思っていませんから」
エリアが少し戸惑っている。
まあそれもそうだろう、今までずっと仲間だと思っていたのが全く知らなかった人物だと知れば、警戒もするものだ。
「私は今の人生をユカ・カーサとして生きてきました。そして、成人の儀式を迎えた時、天啓を受ける際に、この世界の神様に出会い、前の人生のことを一気に思い出したのです」
大魔女エントラは私の話をうなずきながら聞いている。
「私は日本という国でゲームクリエイターとして人生を送っていました。その仕事はやりがいがあり、私は責任者、リーダーとしてスタッフみんなをまとめて数多くのゲームを作っていました」
「ゲーム……クリエイター?」
ダメだ、エリアにはゲームの概念から説明しないといけないようだ。
だが、それを説明したところで理解してもらえる保証はない。
どう説明するべきか……。
「ソウイチロウ、その説明ではエリアちゃんが理解できないようだねェ。もう少しわかりやすく、物語の主人公を体験できる小さな世界を作る製作者と言ってみてはどうだろうねェ」
「つまり、ソウイチロウさんは作家さんみたいな……ものです……か?」
まあそうだな、作家と言っておけばいいか。
「そうです、数人が主人公になれる物語を体験できる作家だと考えてください。それを紙の上ではなく現実世界に実現して作っていました」
「ソウイチロウさんって……創世神様ですか?」
ますます誤解を呼んだような気がするが、このまま話を続けよう。
「い、いえ。私は神様ではないです。一介の作家みたいなものです。まあ、マッピングとか世界構築にバランス調整はしましたが……」
「なるほどねェ。あのハズレスキルと言われた床貼りをこれだけ使いこなせたのもその経験があったからってわけだねェ」
大魔女エントラは、私のこの話で今までのことを大体理解したようだ。
「で、そのソウイチロウはこの後どうするつもりなのかねェ」
そうだ、私の過去の話よりも、この空間からどう出るかを考える方が優先だ。
エリアには私の過去のことは後々じっくり話すことにしよう。




