396 姿なきユカ
ここからは異空間に飛ばされたユカ(創一郎)エリア、エントラの三人の話になります。
……ここはどこなのか?
私はどこかわからない場所に飛ばされたようだった。
辺りを見渡したが、何もない場所だ。
いうならば辺り一面マーブリングの空間。
創作によく出てくる四次元空間や意識世界と言われるようなものに迷い込んだようなものだ。
そしてここにいるのはエリアとエントラ様、どうやら私達はバグスという人物のスキルで別空間に飛ばされてしまったようだ。
「エリア、エントラ様、大丈夫ですか!?」
「……ウ……ウゥ、ユカ? 妾達はどうやらどこかに飛ばされたようだねェ」
「ユカ……私達、一体どうしたの?」
どうやら二人とも気が付いたようだ、私もどうにか動かなくては……。
「え? ユカ、声は聞こえるけど、どこにいるの? それに……声が何か違う」
「え? エリア、一体それはどういうこと!?」
私はエリアの肩に手を置こうとした、しかし……私はエリアに触れる事ができなかった。
「ユカ、ユカ……どこにいるの?」
「ここだよ、ボクはここにいる」
私はエリアに答えた、しかしエリアは私がここにいることがわからないようだ。
ひょっとして私は、透明人間になっているのか?
「ユカ、アンタ今確かにここにいるんだよねェ」
「はい、ここにいます」
「残念だけど、今のアンタは……身体が無いみたいだねェ」
「!!??」
それは一体どういうことなのか、まさか……今の私はよく言われる霊体、魂だけの存在と言うべきなのだろうか。
「多分お察しかと思うけど、今のアンタは肉体から切り離された魂だけの存在みたいだねェ」
「まさか、そんなことが……」
「どうやらあのバグスとかいうヤツのスキルで、アンタは肉体と魂を切り離されたみたいだねェ」
大魔女エントラの洞察力は凄いものがある。
私は元ゲームクリエイターなので、肉体と魂が分離したキャラが再び元に戻るシナリオみたいなのも書いたことはある。
しかしそんな執筆や製作経験の無い大魔女エントラは、この状況だけで肉体と魂の分離状態を把握してしまったのだ。
「それって……ユカは死んでしまったということなの?」
エリアが涙目になっている。
これはどう説明していいのだろうか。
「いや、そうではないからねェ。エリアちゃん、ユカは今も元の場所にいる、ここにいるのはユカの中のもう一人のユカの意識だからねェ」
大魔女エントラ様が今の状況をエリアに説明してくれた。
だが、私や大魔女エントラみたいな、概念がわかっていること前提のこの説明で本当に伝わるのだろうか?
「ユカの中のもう一人のユカ……もしかして、善のユカと悪のユカみたいなもの!?」
それは少し違う、ここにいるのが悪のユカなんて認識されたら話がますますややこしくなってしまう。
「おっとっと、それは少し違うからねェ。でももし……ここにいるのが悪のユカだったとしたらエリアちゃんはどうするつもりだったのかねェ」
頼むから話をややこしくしないで下さい。
「違う……でも、もしここにいるのが悪の心のユカだったら、私は戦います。そして説得して悪の心を変えてみせます」
まあ、エリアならそういう反応をするだろうと思った。
「流石だねェ。エリアちゃんは聖女の素質十分にあるねェ……いや、ひょっとして聖女様よりも女神様かもねェ」
大魔女エントラが何か意味ありげな話し方をした。
「わ、私が女神様……そんなのないです、そんなわけありませんよ」
「えー、エリアちゃん何かあると思ったんだけどねェ」
大魔女エントラは間違いなく何かを知っている、だが今はまだそれを話す時ではないといったところだろう。
「とにかく、ここにいるユカは悪の心とかじゃないからねェ。エリアちゃん、今から言うこと、信じてもらえるかねェ」
「今から言うこと、ですか?」
「アンタも応えてくれると助かるんだけどねェ。ソウイチロウ」
間違いなく大魔女エントラは私のことに気が付いているようだ。




