394 最弱にして最凶
邪神テスカトリポカはけたたましく笑っている。
この笑い声はかなり精神的に堪えるものだ。
そしてこの邪神は一瞬で木を溶かすほどの毒を持ち、攻撃力は今まで戦った相手よりもよほど強い。
蛇の部分、そして髑髏の姿、どちらもが毒と凄まじい攻撃力の牙を持っている。あの牙で噛みつかれたら致命傷確定だ。
「ケケカカカカカカッ!! 弱い、弱いなぁ。我の贄になるならもっと強き者であれ」
テスカトリポカは髑髏から蛇の姿を見せた姿で笑っている。
「トールハンマー!」
「グゲゲゲェエエッ!!」
ルームさんの雷の魔法が邪神を上空から地面に叩き落とした。
「でやああー!!」
ホームさんの聖剣が邪神を捕らえた。
でもさすがに剣の一振りで邪神が倒せるわけがないだろう……と思ったが……邪神テスカトリポカはホームさんの剣の一撃でバラバラに砕け散った。
「何じゃ、呆気ない雑魚じゃのう。もう死におったか」
ボク達は偉そうに言っていたくせに、ホームさんの剣によって一瞬で倒された邪神に唖然としていた。
「では……時渡りの神殿を目指しましょう」
「そうだなー。オレの出番無かったなー」
みんながその場を離れようとした時、シートとシーツが低い唸り声を上げた。
「あれ? 二匹ともどうしたの?」
「ガルウウウウゥ!!!」
すると、ボク達の見ている前でバラバラに砕けたはずの邪神が空中にパーツとなって浮き上がった。
「ケカカカカカカカッ! 我は不死の神なり。我が魂は不滅……」
なんと、邪神テスカトリポカはその後バラバラになった姿を一瞬で元の姿に戻した。
「ケカカカカカカ、貴様らは死んだら二度と甦れない、しかし死者の神である我は何度でも甦る事ができるのだ」
コイツは今までに戦った敵とは全く違う。
あの邪神竜ザッハークを倒したような倒し方はできるのだろうか
「邪神の下の地面を聖なる魔法陣にチェンジ!」
「無駄だ、無駄だ」
邪神は呪いの血を聖なる魔法陣に垂れ流し、その効果を無効化、地面を毒の沼地に変えた。
「貴様、不思議な力を持っているようだが、我には効かぬ。大人しく贄として我が血肉となるがよい!」
邪神は髑髏から何匹もの蛇を生み出した。
邪神の蛇がボク達に襲いかかる。
ボク達は全員で蛇を倒した。
しかし邪神の蛇は倒しても倒しても何度でも甦ってくる。
「無駄だ無駄だ無駄無駄、我は死者の神。死んだ者は皆、我の下僕となるのだ」
ホームさんが手の動きを止め、そして目を閉じた。
「ホームさん、一体何をするんですか」
「……今は黙ってください、アイツの核を……」
ホームさんが意識を集中している。
そしてその後目を開いた彼は、邪神に斬りかかった。
「お前の核はここだぁ!」
ホームさんの剣には確かな手ごたえがあった。
そして、邪神は一刀両断にされた。
「やった!」
「ケ……ケカカカカカカカ、無駄だと言っておろうに」
「何だって!?」
真っ二つに斬られたはずの邪神は再び元の姿に戻っていた。
「馬鹿なっ!! 確実に核を斬ったはずなのに」
「愚か者が、我に核など存在せぬ。我は個にして全、全にして個なり」
アンさんが邪神を睨みつけている。
「むう、もしやアイツは……」
「俺に任せてくれ。出でよ白き獣オソイ!」
「我が主よ、わたしに任せよ!」
白い獣オソイが鋭い爪で邪神を斬り裂いた。
しかしバラバラになった邪神は再び元の姿に戻った。
「貴様、死の国の者のくせに我に従わぬのか」
「黙れ、わたしの主はフロア様ただ一人。死の国の蛇ごとき、わたしの敵ではない」
「ケカカカカカカカ、生意気な獣ごときが、魂までも喰らってやろうか!」
「わたしの魂は邪神ごときに砕けるものではない! 行くぞ」
オソイが鋭い牙で邪神に噛みついた。
「グゲゲァアアアッ!!」
それは何の効果も無いはずのオソイの噛みつきだった、しかしその一撃は確実に今まで余裕だったはずの邪神に苦しみを与えた。
そうだ、この邪神にも何か絶対に弱点があるはずなんだ。