392 邪神の呪い師
好戦的で邪神を崇拝する原住民とのバトルはボク達の勝利で終わった。
原住民達はボクの作った大穴に落ち、アンさんの呼んだ大雨で出来た池の中で大半がおぼれ死んだ。
「ガ……ガミ! ダンダダ、ダダンダダ ンダンダダ! ダンダダダダン! ダダンダ!」
謎の呪文を唱えた生き残った原住民は何かを呼んでいた。
すると、ボク達の上空に巨大な影が見えた。
「何だアレは!?」
「巨大な髑髏じゃと? なんと面妖な!」
ボク達の上空に現れた謎の影は巨大な骸骨のように見えた。
しかし人の骸骨を巨大化したような怪物は、ボク達に目もくれず、原住民が溺れ死んだ池に向かい凄い速さで降りてきた。
「ギギギギ! ギマダッ! ドビダゼ ズギードグゴグ!」
邪神の呪い師らしき原住民が謎の呪文を唱えている。
すると邪神らしき巨大骸骨はその大きな口を開き、溺れ死んだ原住民と生き残った原住民を区別なくその口の中に咥えた。
そして歯を立てながらその原住民を咀嚼しだした。
ガリゴリムシャムシャバリガリグシャゴリ……。
辺りに不快な骨を噛み砕きすり潰す音が響く。
精神力の弱い人なら、間違いなく気絶するようなおぞましさだ。
邪神の髑髏は噛み砕いた原住民の血を祈りを捧げる呪い師の頭上から垂れ流した。
すると、邪神の食べ残した死体から流れ出た血は呪い師に降り注ぎ、呪い師は不気味な仮面を着けたままその血をゴクゴクと飲み込んだ。
「ケカカカカカカカカッ!」
邪神の骸骨がけたたましい笑いをあげた。
その笑い声は精神力を持って行かれるような不快さだった。
「バリアフィールド!」
ルームさんが魔法でボク達全員を守る光のドームを作ってくれた。
どうやらこの光のドームは精神攻撃も無効にするようだ。
ボクの見ている前で呪われた血を飲んだ邪悪な呪い師は、肉体が盛り上がり、その身体は巨大な猿の怪物のような姿に変わった。
「何とおぞましいバケモノじゃ!」
「アイツは倒さないといけない奴だ!」
「ああいうヤツは相手したくねーんだけどなー」
みんなが不快感を示している。
邪神に魂を捧げた呪い師は大猿のバケモノになり、ボク達に襲いかかってきた。
ボクはその攻撃をとっさにかわしたが、大猿はボクの後ろにあった巨木を片手でへし折った。
これはかなり強い!
ボク達は先程、古代兵器タルカスを倒すのに結構MPを使っている。
もしこの後で邪神と戦うことになると、ここで下手にMPを減らすわけにはいかない。
ボクが大猿の怪物を見ていると、怪物は自らの指を食いちぎった。
一体何をしようというのか。
すると、大猿の怪物が血を垂らした場所に、気味の悪い肉塊とも土くれともつかない不気味な魔物が地面から姿を現した。
血で出来たバケモノなのでブラッドゴーレムといったところだろうか。
腕と頭だけのそのバケモノはボク達の方にうぞうぞと這い寄ってきた。
これ以上あの大猿を野放しにするともっと大量のブラッドゴーレムが生み出される。
コイツを倒さないとジリ貧だ。
ボクはMPを減らさずにこのバケモノを倒す方法を考えた。
そういえば以前、邪神竜ザッハークを倒した時、聖なる魔法陣の床を作るとボク達のMPを回復させながら邪神にダメージが与えられたはず。
これを使えば同じような邪神が相手なら勝てるかもしれない。
「僕の目の前に聖なる力の魔法陣を作ってくれ!」
ボクのマップチェンジスキルは目の前に大きな魔法陣を作ることができた。
しかしMPが一気に持って行かれた感じがする。
やはり属性のある床を作るのはかなり大変なようだ。
ボクの作った魔法陣は呪い師の大猿を捕えた。
大猿は動けなくなり、その身体からどす黒い気体が抜け落ちていく。
呪い師から抜け出したどす黒い気体は、上空にいた邪神が口を大きく開けて吸い込んでいた。