390 弔いの火の海
古代兵器タルカスは古代の悪しき文明が作り上げた巨大兵器だ。
だがボクの仲間達は、それを上回る強さで壊している。
ボクがマップチェンジスキルで作った鋭い岩は、剣山のようになり、いくつもの尖った岩が地面から突き出していた。
そこにアンさんが巨大竜巻を巻き起こしたことで空高く舞い上げられた古代兵器タルカスはきりもみ状態で落下、ひっくり返る形で背中を巨大な尖った岩にいくつも貫かれた。
「Ψ×ΨΨΦΣ▽!」
古代兵器タルカスはひっくり返ったまま動けない。
その動けない足を狙い、ホームさん、シート、シーツ、カイリさんがそれぞれ別の脚を攻撃した。
激しい音を立てながらタルカスの脚がへし折られ、逆に曲げられ、内部の機械が露出している。
胴体部分はマイルさんが縛り付け、フロアさんはセンサー部分を白い獣オソイを呼び出して噛み砕かせていた。
流石の古代兵器もレベル60超えのS級冒険者達の前にはただの金属の塊に過ぎなかった。
でもそれはあくまでもみんなが知恵を絞り、力を合わせて戦ったからだ。
もし正攻法で立ち向かっていたら、あの巨大な目からの熱光線か巨大な雷や炎でやられていたかもしれない。
ここにいるボクの仲間達は、どれだけの激戦を繰り広げてきたのだろうか。
それも『バンジョウソウイチロウ』さんが立てた作戦でみんなが戦ってきた結果なのだろう。
今のボクは、みんなの足手まといにならないくらいには戦えている。
でもリーダーとしてみんなを引っ張るほどの力はない。
それでもみんなはボクをリーダーとして見てくれている。
そんなみんなの期待に応えるためにも、ボクは戦わないといけない!
「でやあああー!!」
ボクは岩に突き刺さったままの古代兵器タルカスの上に自分の足元の高さを変えて駆け上った。
「たあああーっ!!」
そして内部の機械の見えた部分に深く、ボクの持つエクスキサーチの剣をめり込ませた。
「ユカ様、少し後ろに離れてくださいませ!」
「ワシも力を貸してやろう!」
アンさんとルームさんがそれぞれ巨大な雷を上空に呼んだ。
「トールハンマー!!」
「紫電降雷!!」
黄色の雷と紫の雷が螺旋を描くようにタルカスの身体を貫いた。
「ΨΨΨ××!!……÷…」
古代兵器タルカスは二つの雷を受け、完全に沈黙、停止した。
「やりましたわ」
「ふむ、何ともあっけない幕切れじゃったのう」
あれだけの極大魔法を使いながら二人共平気な顔をしている。
一体この人達はどれくらい強いのだろうか……。
「ユカ様、これでもうこの辺りに敵はいません」
「どうやらあの古代兵器タルカスってのがここにいた兵士達全部始末しちゃったみたいだねぇ」
そう、バスラ伯爵の兵士達は暴走したタルカスによって一人残らず皆殺しにされていた。
そのためここは今は僕達以外誰一人としていないのだ。
「むう、しかし何度嗅いでも不快な臭いじゃな」
「ここにいるのは哀れな死者たち。せめて私が全て火に還して弔いますわ」
そう言うとルームさんは手に持った杖を高く掲げた。
「哀れな屍達にせめて安らぎを……ボルガニック……フレア!」
ルームさんの炎は辺り一面を覆い尽くしていた死体の山やゴミを全てのみ込み、辺りは巨大な炎の海になった。
ボクはみんなの立っている場所をマップチェンジで炎の届かない高さにチェンジし、そのゴミ捨て場が焼き尽くされるのを見ていた。
そしてゴミ捨て場の全ての火が燃え尽きるまで、その後一日半を要した。
「きれいに何もなくなりましたね」
「でもさすがに殺風景ですわ」
「ふむ、そうじゃ。ユカ坊。この場所を一面の花畑にする事はできるかのう?」
アンさんがボクにマップチェンジスキルを使うように言ってきた。
「やってみます。この辺りの焼け野原を全て花畑にチェンジ!!」
そして、巨大なゴミ捨て場だった場所は辺り一面を埋め尽くす巨大な花畑に姿を変えた。