389 古代兵器タルカス
父さんに昔聞いたことがある。
この世界にはかつて大昔に存在した高度な文明があったそうだ。
その文明は恐るべき兵器を持ち、周りの国全てを支配した巨大な帝国だったらしい。
だが、神に逆らった者達の帝国は、神の怒りに触れ、一晩で姿を消したという。
しかしその文明によってつくられた兵器は人知れず動き続けたとも、その姿を消したともいう。
ボク達が今目にしている巨大な物体は、その古代文明によってつくられた怪物だ。
古代兵器タルカスはその巨大な目から光線を放ってきた。
「ボク達の足元を大きな落とし穴にチェンジ!」
シュバッッ!!
タルカスの熱光線は一閃の光の帯になって落とし穴の頭上をかすめた。
その閃光は、瓦礫の山を一瞬で真っ二つに断ち切った。
「危ねえ危ねえ、あんなモン喰らったら一瞬で終わりだぜー」
「ふむ、どうやらアレは生き物ではなく、一種のカラクリのようじゃな」
「とにかくアイツをどうにかしないと、僕達助かりませんよ」
ボクは落とし穴になっていた地面を元の高さに戻した。
タルカスは目を閉じている。
どうやらあの光の攻撃は一度撃つとその後時間を回復しないと連発は出来ないようだ。
しかし、タルカスは目以外の身体から触覚のようなものを伸ばし、辺りを探っていた。
「どうにかあの巨体を動けなくしないと、勝ち目は無さそうですね」
「お兄様、私にお任せ下さいませ。魔法で仕留めて見せますわ!」
ルームさんが大きく杖を掲げた。
「トールハンマー!!」
ルームさんの魔法は、古代兵器タルカスを巨大な雷で貫いた……はずだった。
しかし、タルカスは雷の直撃を喰らう前に三つのアンテナを高く立て、雷をはじき返した。
「な、何ですの!? レジスト……サンダー!」
ボク達を光の膜が包んだ。
この光の膜のおかげで、ボク達は誰一人として傷つかずに済んだ。
「危なかったですわ。雷無効の魔法が少し遅ければ、誰かが犠牲になっていましたわ……」
ルームさんが肩で息をしている。
古代兵器タスカス相手に、ルームさんの魔法は効かないようだ。
「ルーム、僕に任せてくれ」
ホームさんは白い剣を構えると、タルカスの足元を狙って攻撃した。
「いくら硬い金属でもこの魂の救済者なら!」
ホームさんの持つ剣はその辺りで買える剣とは大きくレベルが違う。
古代兵器タルカスが、どんな金属で出来ているのかはわからない
だが、ホームさんの剣はそんなタルカスの巨大な脚に確実に食い込んでいる。
「茨の呪縛」
マイルさんがゴミ捨て場に会った植物の種をスキルで成長させ、その巨大化した蔓でタルカスの脚を絡め取った。
「ガアアアォオオウ!」
銀の狼シートが金属の爪を立て、タルカスの露出した内部のロープみたいなものを噛み引き裂いた。
タルカスの右前脚から黒い液体が流れ出る。
どうやら血ではないようだが、何かの油のように見える。
タルカスは動けない一本の脚をそのままに、残りの三本の脚で動き出した。
その奇妙な動きはまるで虫のようだった。
「オレもいるぜー! 食らないなー!!」
カイリさんが槍を軸に高くジャンプし、タルカスの目に槍を突き刺した。
「◇Ψ§§Ψ×Σ」
タルカスが謎の音声を発している。
そして上空に舞い上がったアンさんはタルカスの上空から見下ろしていた。
「どうやら雷は跳ね返すようじゃが、ワシの突風はどうかのう!」
アンさんが右手を高く振り上げると、タルカスは巨大な竜巻に巻き込まれ……その巨体は空高く持ち上げられた
「ユカ坊、まっぷちぇんじのすきるとやらで、あのデカブツの真下に小さな尖った岩を大量に作ることはできるかの?」
「は、はい。やってみます。タルカスの足元の地面を尖った鋭い岩にチェンジ!」
上空高く舞い上げられたタルカスはその後凄いスピードで落下し、ボクのマップチェンジスキルで作った尖った岩に突き刺さった。