388 暴走する古代兵器
「死ねよやぁっ!!」
「お前らを汚物にしてやるぜぇ!」
「女は殺すなよ。しっかり楽しんでからぼろ雑巾のようになってから殺してやろう。ガキをいじめ殺すのは最高に楽しいぜ」
品の無いセリフのオンパレードだ。
だがどいつもコイツも相手のレベルは今のボクですら余裕なくらいだ。
S級冒険者と言えるボクの仲間には傷すらつけられないだろう。
ここの兵士は武器防具だけは立派なものを持っているが、レベルはD級冒険者とすら言えない強さだ。
もう相手にするレベルですらない。
動きは緩慢、剣技は素人レベル。
ボクはそんな兵士の剣を軽く受け止めた。
「な? オレ達の武器はミスリル製の特注品。そこらの凡人が手にできるものとはケタが違うんだよ! それを受け止めたぁ??」
ボクの持っている剣はどうやら古代の遺跡で手に入れたエクスキサーチという剣。
これはミスリルを軽く上回る最高級品のSSクラスだ。
ホームさん、ルームさん、フロアさんにマイルさん、カイリさんにシートとシーツの双子の狼。
全員の武器がどこで手に入れたのかわからないが、ミスリルを遥かに上回る凄い金属で出来ている。
ボク達は余裕で兵士をなぎ払った。
全員が一人で数人を吹き飛ばせるレベルだ。
「バ、馬鹿な!? コイツらの強さ、バケモノかよ!!」
兵士達が全員その場にへたり込んだ。
そんな中の一人が何やらレバーを引くと魔道装置が発動した。
「けーけけっけっけっけ! 廃棄用だった古代兵器タルカスの恐ろしさを思い知れぇ!!」
魔道装置は不気味な音を立て、ゴミ捨て場から四つの足を踏みしめながら歩いてきた。
その見た目はカニか蜘蛛のような不気味な姿に巨大な一つ目がついた甲羅のようなもので、その不気味な巨体がガシャガシャと音を立ててこちらに歩いてきた。
「オレは知らないぞ、タルカスは暴走するから廃棄された古代兵器だ! コイツを止めるすべはねえんだよ。テメエら全員踏みつぶされてしまえ! グビェッ!」
タルカスと呼ばれた不気味な巨大機械は、足元にいた兵士をその巨大な脚で踏みつぶした。
その後もその辺りで動けなかった兵士達は全員がタルカスに踏みつぶされたり、胴体からの炎や雷で蹂躙された。
「ぬう、なんと醜悪な姿じゃ。まるで巨大な土蜘蛛じゃな」
「あんなものただ図体がデカいだけです。僕が足元を狙うからルームは援護を頼むよ」
「承知致しましたわ!」
「さーて、オレは何をすればいいかねー」
「カイリ、あーし達はまだ様子を見た方が良さそうだよぉ」
ボク達は古代兵器タルカスがどんなものかまだ分かっていない。
そんな状態で戦ったら誰かが犠牲になってもおかしくない。
「みんな、一旦様子を見よう」
「ユカ様、承知致しましたわ」
「ユカ様、了解です」
古代兵器タルカスはある程度に歩いてくると、動きを止めた。
そしてその巨大な一つ目でボク達をジロジロとのぞき込んだ。
「〇Φ±Ψ§Ψ××」
何を言っているのか全く理解できない。
だがタルカスがボク達を狙っているのは間違いない。
少しの沈黙の後、タルカスは二つの脚を踏みしめたまま、もう二つの脚で地面を踏み鳴らした。
その振動は巨大な地震となり、ゴミ捨て場だった建物は壁がひび割れ、瞬く間に瓦礫の山に姿を変えた。
「何という力じゃ。これが古代兵器とやらの能力か」
アンさんも初めて見る古代兵器に驚いていた。
古くから生きているドラゴンの神様ですら知らない古代兵器、一体これは何者なのだろうか。
だが一つだけ分かっていることがある。
この暴走する古代兵器タルカスを破壊しなければ、ボク達はここから出られないのだ。
古代兵器タルカスは、不気味な音を立てながらボク達をターゲットに決めたらしい。
少々の沈黙の後、タルカスのその巨体の目から光線が放たれた。
タルカスの放った光線はボク達を焼き尽くそうとしているのだ。