387 ゴミ掃除の時間
「い、一体……何なのこれは……!?」
「何というおぞましいものじゃ、人の所業とはとても思えぬ、腐れ外道どもめ」
「これ……生きているのもいるわよぉ」
ボク達が軍用馬車の扉を開くと、その中には異臭を漂わせた死体とまだ生きている肉塊らしきもの、人体実験の合成失敗と思わしきモノなどが詰め込まれていた。
臭いは凄まじく、見た目は一目見ただけで吐き気をもよおすレベル。
肉塊はかろうじて人間の言葉を話すモノもいた……。
「タス……ケテ、タス、、、、ケ」
「コロ。シ……て。 オネガ……イ」
「マ……マ、ド……コ」
ボク達は言葉を失った。
これこそが、バスラ伯爵がこの領地に他人を入れなかった理由なのか。
ここは死体や実験失敗の人間、モンスターなどのゴミ捨て場なのだ。
おそらくこの軍用馬車はゴミ捨て場に向かうためのものだったのだろう。
馬車の後ろに詰め込まれていたのは、生きているとは到底言えない姿の可哀そうな生き物だった。
「ユカ様……私に……お任せ下さいませ!」
ルームが力強い目でボクを見つめた。
彼女には決意したことがあるようだ。
「う、うん。わかった」
「それでは行きますわよ! イラプシオン・コルムナ!」
ルームさんの杖から凄まじい炎の柱が立ち上った。
炎の柱は一瞬で軍用馬車を焼き尽くし、そこには何も残っていなかった。
「ルーム……せめて花を供えてあげよう」
「そうですわね、もう骨すら残っていませんですし」
「ふむ、浄化の炎か。まああの姿で生きるよりは救いかもしれぬのう」
ここにいるみんなが、ルームさんのことを褒めるわけではなかった。
だが、彼女がやったことを非難する人も誰もいなかった。
あの馬車に積まれていたのは、死体と、もう生きることが苦痛だというレベルのモノだけだったのだ。
「許せませんわ……命を弄ぶ悪魔! 私が必ず敵を討ってさし上げますわ!」
ルームさんは軍用馬車のあった方向を見ながら怒りに燃える目をたぎらせていた。
「このような不幸を繰り返さないためにも、ゴミ捨て場を潰してやろう!」
「俺も許せない。命を弄ぶ輩に死を!」
フロアさんは、一族の全てを公爵派貴族に殺されている。
そんな彼にしてみると、命を玩具にする連中は絶対に許せない存在なのだろう。
「決まりじゃな、時渡りの神殿に行く前にゴミ掃除と行くかのう」
「オウ! オレもトサカに来てるんでなー。徹底的にやってやろうぜー!!」
ここにいる誰もがバスラ伯爵の非道ぶりに怒っていた。
「そうだね! ボク達でゴミ捨て場をぶっ潰してやろう!!」
「ユカ様、もちろんですわ。あの可哀そうな人達をこれ以上増やさないためにも絶対に叩き潰してさしあげましょう!」
ボク達は軍用馬車の向かおうとしていた方向に、そのまま足を進めた。
これだけの大型馬車を通す道だ。
この大きな道に沿って行けば、目的地に迷うことも無い。
そして半日ほど歩いた先で、凄まじい臭いが漂ってきた。
どうやら近くにゴミ捨て場があるらしい。
「むう、とてもじゃないが我慢しきれぬ臭いじゃ。ワシがどうにかこの臭いを嗅がずにすむようにしてやろう」
アンさんは風を操り、悪臭を上空に吹き上げた。
そのためボク達は直接嫌な臭いを嗅ぐ前に移動する事ができた。
そして、さらにボク達が歩き続けると、その先には巨大な壁で囲まれた建物が見えてきた。
どうやらこの建物がゴミ捨て場の建物のようだ。
「何者だキサマラ! ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
バスラ伯爵の兵士達がボク達を取り囲んだ。
「ここを見られたからには死んでもらおう。なーに、死体はゴミとして捨てればいいだけだ」
ボク達は全員、戦闘体勢に入った。
「みんな、ゴミ掃除の時間だよ!」
ボクは全員に聞こえるように大きな声で叫んだ。
人の命を弄ぶ奴らをボクはあえてゴミ扱いしてやった。
「オレ達をゴミだと!? ぶっ殺してやる!!」