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386 暴走する軍用馬車

 街で情報収集をしたことで、ボク達は次の目的地を決めることができた。


 『時渡りの神殿』


 目的はここなのだが、その近くには邪神サマエルと呼ばれる翼をもつ悪魔が住み着いているということも聞いた。

 そして時渡りの神殿へ行く道は今は封鎖されていて通れない。

 また、橋が落ちているので神殿まで行く方法も考えなくてはいけないのだ。


「ユカ様、とりあえず準備はできました」

(わたくし)も準備出来ましたわ」

「あーしももう出る準備できてるわよぉ」


 ホームさん、ルームさん、マイルさんにカイリさんとアンさん、それにシートとシーツの双子の狼、全員旅に出る準備は終わったようだ。


「ユカ様、本当にありがとうございました。またこの町を訪れるのをみんな心よりお待ちしております」


 ボク達は町の人達に見送られ、時渡りの神殿のあるという西の方に向かった。

 どうやら時渡りの神殿は、海の上にあるらしい。


 ボク達はその海を目指し、海岸を歩いた。


「船があればすぐ行けたかもしれないのになー。オレが船で来れなかったから悪かったな」

「そうもいかんようじゃぞ、この辺りは浅瀬が多く、船でこんな場所に来たら座礁確定じゃ。その上、この辺りは切り立った崖が多く船が挟まれかねんわい」


 カイリさんは海賊で海の専門家だが、アンさんは水や風を司るドラゴンの神様だ。

 流石のカイリさんもアンさんの言葉には反撃する余地がなかった。


「そりゃー船じゃ無理だ」

「だから今僕達は徒歩で向かっているのです」


 しかし今ボク達の歩いている道は、不自然なくらい大きな道だった。

 まるで馬車や荷車がそのまま通れるくらいのサイズにしているようだ。


「遠くから何か聞こえて来るぞっ!」


 フロアさんが鳥から伝えてもらった情報をボク達に教えてくれた。


「むう、何やら戦場で嗅いだような悪臭がしておるわい」


 アンさんも空気の濁りを感じたらしい。


 そして、ボク達のはるか後方から高速で迫ってくる大型の軍用馬車が現れた。


「どけ! どかないと轢き殺すぞっ!!」


 馬車に乗っている兵士は私達を脅してきた。


「ユカ様、あの連中にオシオキしてくださいませ」

「う……うん。ボクの目の前の地面を大きな穴にチェンジ!」


 ズボォッ!!


 高速で走ってきた馬車はいきなりできた穴にすっぽりと落ちてしまった。


「な、何をする!? この卑怯者!!」

「外道に卑怯者呼ばわりされる筋合いは有りませんよ!」

「な、何だとぉ! おれ達をバスラ伯爵様の兵士と知ってのことか! てめえら全員ぶっ殺してやる!」


 ルームさんが無詠唱で魔法を唱えた。


「ファイヤーボール」

「ぎゃがあああああっ! ぎゃああっっちっちいいー!!」


 数人いた兵士は全員が一瞬で火だるまになった。


「ひええええー、強すぎる、バケモノだー!!」

「失礼ね、こんな可愛いレディをバケモノ呼ばわりするなんて失礼ですわ」

「のう、可愛い女子(おなご)ならここにもおるぞい」


 あまりの想定外のことに兵士達は全員がパニック状態だ。


「ガキが! さっさとそこを退かないとぶっ殺すぞ!」

「口の利き方を知らぬ痴れ者が……きっついオシオキが必要じゃな」


 アンさんが指を空に向けると、逃げようとしていた兵士達が竜巻に巻き込まれた。


「ひえええー! 何だコイツらは……まさか、コイツらがお尋ね者の救世主ユカとその一味か!?」

「こんな連中に勝てるわけがない! 逃げろー!!」


 死ななかったバスラ伯爵の兵士達は、馬車の積み荷をそのままにして全員逃げ出してしまった。


「アイツら馬車を置いて行きましたね」

「そうだな、あれだけの兵隊で運ぼうとしていたんだ、何か重要な物が入っているかもしれないなー」


 だが、頑丈な馬車の扉を開いたボク達の目に飛び込んできたのは想像を超えるおぞましいものだった。


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