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382 汚染された空気と水

◆◇◆


 ボク達は町の人達に歓迎され、宿屋の一室に泊めてもらった。


「どうぞユカ様、お口に合うかどうかわかりませんが」


 ボク達の目の前に出された食事は、お世辞にも美味しそうとは言えないようなもので、臭いも何かおかしかった。


 だがここでこれを食べられないというと、この人達に悪い気がしたのでボク達は食事を取ることにした。

 明らかに腐りかけの肉、傷んだ野菜、水も濁っていて味はかなり悪かった。


「粗末な物で申し訳ございません、ですがそれが今のわたしたちの精一杯のおもてなしなのです」


 よく見ると、町の人達は誰もが痩せこけていて、目も落ちくぼんだ感じだった。

 多分何日も食事をしていないのだろう。


「ユカ様、ここも以前のヘクタール領と同じです。公爵派貴族は自身の贅沢だけではなく、いかに領民を苦しめるかを楽しんでいる連中なのです」


 ホームさんがボクに説明してくれた。

 どうやらヘクタール領とは今のフランベルジュ領のことらしい。

 あの演劇に出てきたヘクタール男爵の治めていた場所で、かつては食事にもありつけないひどい場所だったようだ。


 ボクの中にいた『バンジョウソウイチロウ』さんがヘクタール男爵を倒し、人々を解放したのだろう。

 ボクも今は救世主と呼ばれるだけの力を身に付けた。

 今のボクならこの困った人達を助けてあげられるかもしれない。


「すみません、皆さん。少しボク達だけにしてもらえますか?」


 ボクは町の人達全員を一旦その場に残し、宿の部屋に鍵を閉めた。


「皆さん、ボクが今考えていることがあります。うまく行くかどうかわからないけど協力してくれますか?」

「ふむ、ワシは構わんぞ」

「おう、オレも話を聞くぜー」

「僕達も大丈夫ですよ」


 みんながうなずいてくれた。

 ボクは右手を何もない床に向かって広げた。


「ボクの目の前の床をワープ床にチェンジ!」


 これでどこに行くのかはわからない。

 でももしこのスキルがボクの思った通りのものなら、ボク達は冒険者ギルドの町に行けるはずだ。

 ボクはできあがったワープ床に足を踏み込んだ。


 すると、ボクは見覚えのある冒険者ギルドの町に到着した。


「やった、成功だ!」


 ボク達は持っていたお金を使い、冒険者ギルドの町でありったけの食材を買って、再びバスラ伯爵領の町にワープ床で戻った。


「これを皆さんに、どうぞ食べてください」

「こ……これは、なんと立派な食材だ。ありがとうございます、ありがとうございます」

「ふむ、しかしこの町の臭いはどうにかならんもんか? 食欲が削げてしまうわい」


 アンさんが鼻をつまみながら愚痴っていた。


「申し訳ございません、今はバスラ伯爵領全体が常にこのような臭いなのです。わたしたちは逃げようにもこの臭いのせいでどこにも行く事ができません」

「仕方ないのう、ワシが手助けをしてやろう!」


 アンさんは宿の窓から飛び出すと、空中高く舞い上がった。


「この町を包む臭い……風と共に消え去るがよい!」


 アンさんの巻き起こした突風は、町を包んでいた悪臭を一瞬で拭い去った。


「おお、なんと……ありがとうございます、ありがとうございます!」

「気にするでない、ワシは単にこんなひどい臭いの中で食事をしたくなかっただけじゃ」


 アンさんが少し顔を赤くしながら町の人から目線をそむけている。

 ボクにはどうもその態度が不自然に見えた。


「しかし、水がこれでは……せっかくの食材も水でダメになってしまいます」


 どうやらこの辺りの水は完全に汚染されているようだ。


「そうですわ、ユカ様のスキルならきれいな水を作ることもできるはずですわ!」


 ルームさんがボクの方を見ている。

 確かに今のボクのスキルなら、温泉や水を作る事ができた。

 このスキルで作った水なら、綺麗な水で料理ができるかもしれない。


 ボクはホテルの中庭にみんなで移動した。

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