378 新たなる場所へ
◆◇◆
ボク達は、リバテアの宿屋の一番良い部屋をタダで使わせてもらえた。
このホテルは海近くにあったので火事に巻き込まれず、地震での影響も津波がくい止められたのでほとんど無傷と言える状態だった。
だが街は震災の爪痕が残り、再建にはかなりの時間がかかりそうだった。
本来ならボク達が手伝えばもっと早く復興できるのかもしれない。
しかしそれでは時渡りの神殿に行って、過去のボクや離れ離れになったという仲間を助けることが遅くなってしまう。
「ユカ様、大丈夫です。この街はワシらがきちんと建て直します。あれだけの大災害で死者が一人も出なかっただけでも語り継ぐべき奇跡だと言えます。本当にありがとうございました」
「ユカ様、マイル様。この街の復興は私達に任せてください。戻ってくるまでに立派にしておきます」
オンスさんと商隊の人達が全員でボクの作ったというワープから各地の支援を運んできてくれた。
「ふむ、後二週間もすればミクニの救援団も来るじゃろうて。まあ安心して良さそうじゃ」
アンさんのおかげでミクニの国王様達の協力も約束してもらえた。
アンさんにお礼を言うとむしろボクがあの国王様達を助けたので、その恩返しは当然だと言っていた。
今回の話も、国王様達を助けたのはボクの身体を使っていた『バンジョウソウイチロウ』さんなのだろう。
「お頭、おれ達もいますから安心してください! 船での荷運びも陸の作業もどちらもおれ達も力を貸しますよ!」
カイリさんの部下の海賊改め武装商船団も街の復興作業に力を貸してくれた。
「ありがとうよー、てめーら。オレがいないからって手を抜くんじゃねーぞ!」
「「「アイアイサー!」」」
武装商船団の人達は全員が統一された挨拶でカイリさんに返した。
「ユカ様、父上の通行証は一応僕が預かっています。これを持ってバスラ伯爵領に向かいましょう」
「さあ、私たちの旅の再会ですわ。ユカ様、行きますわよ!」
ホームさんとルームさんも旅の準備を進めていた。
ボク達は、全員でバスラ伯爵領を目指すことになった。
ボク達のパーティーは、ボク、ホームさん、ルームさん、シートとシーツの兄妹、カイリさん、マイルさん、それとドラゴンのアンさん。
この全員でバスラ伯爵領に行く、目的はその場所にあるという時渡りの神殿だ。
「さて、ここからばすら伯爵領とやらはどれくらいの距離なのじゃ?」
「だいたい馬で一週間といったところかと」
「よかろう、ワシがみんなを運んでやろう。ワシの上に乗るがよい」
そう言うとアンさんは高く咆え、紫のドラゴンの姿に変化した。
「さあ、乗るがよい」
ボク達は旅の荷物を持ち、アンさんの背中に乗せてもらった。
「たわけ、ワシの角に荷物の紐をかけるでないわ」
「す、すみません」
「ワシの角は衣紋掛けではないぞ」
ボクはアンさんの角に荷物をかけてしまい、軽く怒られた。
「まあよい、皆の者、乗るがよい」
ボク達は全員でアンさんの背中に乗せてもらい、空高く舞い上がった。
「さて、行くぞい。ワシにしっかり掴まっておれよ!」
「皆さん、行ってきます!」
「ユカ様、皆様、ご無事をお祈りしております」
「さようならー!」
アンさんは凄い速さで空を駆け、あっという間にリバテアが遠くになった。
次の目的地はバスラ伯爵領。
ヤツは公爵派貴族の一人だ。
この後何があるのか今のボク達には何も想像がつかなかった。
バスラ伯爵は公爵派貴族、人を人とも思わないでこき使う悪徳貴族の一人だ。
きっとまた苦しめられている人達がいる。
ボク達はするべきはその人を一日でも早く助けることなのだ。
そしてアンさんは空を飛び続け、翌日の朝早くにバスラ伯爵領との関所近くに到着した。
「さて、ではココからはワシに乗って飛ぶのではなく徒歩で行く感じかのう」
アンさんが着陸し、少女の姿に戻った。
ここから先、ボク達は全員で関所に向かって歩いた。