373 灯台に階段を作ろう
さて、問題はどうやってこの灯台に階段を作るかだ。
設計予想図では中に階段を作るのと、外側に階段を作るのの二案が存在した。
今この状況で考えると、中に階段を作るのは地震が来た際に強度的に弱くなりそうなので、外側に巻貝のような階段を作った方が良さそうだ。
「ボクの周りの土地を少し高い土地にチェンジ!」
ボクはマップチェンジのスキルで、灯台の周りの工事現場の土地いっぱいをぐるりと回り、少し段差のある高さの土地に変えた。
「ふむ、地道な作業じゃな。まあ魔力が足りなくなったらワシらが手助けしてやろう」
「それではおれたちは出来た階段の所に手すりを作る工事を始めるぞ!
「「オウッ」」
リバテアの街の人達が工事を再開した。
灯台の工事を担当する人、そして被災した人たちの仮住居を作る人達、瓦礫を除けて建物を建てる人達、住民の誰もが街の復興のために働いていた。
フロアさんやカイリさんは街の復興の手伝いをしている。
ホームさんは自警団の人と瓦礫を壊しては撤去する作業中だ。
カイリさんは水路を使っての運搬を、フロアさんは大型の動物を使っての建築資材搬入や基礎工事を、マイルさんは商隊の人達と復興に必要な資材をワープ床経由で仕入れていた。
手すりをつける工事は、ボクの作った床の上に杭を打つ形で埋め込み式の抜けないような工事法で取り付けられていた。
もう一つの方法はベースプレート式というボルトで固定する方法みたいなのだが、このベースプレート式だと強度的に少し不安が残るので埋め込み式で工事は勧められた。
ボクがマップチェンジで段差を作り、工事の人が柱を設置していく、この工事を数日続け、少しずつ塔の階段は完成していった。
復興した街の観光資源にする事も考え、お年寄りや子供でも登れるように階段の段差は小さく、途中にはいくつもの踊り場を用意した。
そのため、本来の計画よりも階段の形はなだらかに作れたのだが、二週間後、途中で問題が起きてしまった。
らせん状に作っていた階段は、中央部分の盛り上がった土そのものの所でこれ以上は上に階段が作れなくなってしまったのだ。
上の方にはまだもう少し階段を作らないと最上部に辿り着けない。
だが、らせん状に階段を作るにはもう土地の広さが無いのだ。
「困ったことになりましたね」
「これ以上、上に作るのは厳しいな」
だがせっかくみんながここまで頑張って工事をしてくれた。
ここで諦めるのは悔しいとみんな思っているだろう。
「よし、ここから先はこの土をくり抜いて階段を作るぞ!」
「オウ、オレ達も技術屋の意地ってもんがあるからな!」
「皆さん、そんな事ができるのですか?」
「オウ、本来オレ達が最初から最後までやるはずだった工事だ。後は任せな!」
工事のスタッフ達がニッコリと笑って拳を上に突き上げた。
オレ達に任せろという合図だ。
「まあここから上なら耐震強度的にも少しくり抜いたくらいで崩れることはない。安心して工事は続けれますよ」
現場監督の人がボクに説明してくれた。
ボクは工事の資材や削った土を地面に下ろしたり上げたりするのにマップチェンジのスキルで手伝った。
ボクのこのスキルがあったおかげで足場作業が無かった分、工事は予定よりもよほど早く進んでいるようだ。
そして、一か月も経たずに大灯台への階段を作る工事は完成した。
「素敵ですわ! なんと素晴らしい眺めですの」
「これも皆さんが協力したからできたことですね」
「ふむ、これだけのものになるとはのう、じゃが一つ気になることがあるのじゃが」
アンさんが何か気になっているようだ。
「この灯台。どうやって遠くにまで見える火を灯すつもりじゃ?」
確かにこれは問題だ。
工事の人がそこまで考えていなかったといった表情だった。
まあ雨風を遮る小屋のようなものはこの上に追加工事で作ればいいとしても、遠くまで見える火をどうやって灯すのだろうか……。