372 どうやって上に上る?
ボクがマップチェンジスキルで作った灯台は、一瞬で完成し、街で一番高い建物になった。
「す……凄い! こんな巨大な灯台を工事無しの一瞬で作るとは!」
バレーナ男爵様がビックリしていた。
「まあユカ様のスキルならこれくらい簡単にできるのかもしれないですね」
簡単かどうかは分からないが、ボクのスキルは一瞬で超巨大な灯台を作ることに成功した。
「……ところで……この高さから私達はどう降りればいいのでしょうか?」
しまった!
この高さから下に降りるには切り立った壁を降りるわけにもいかない。
さあどうすれば良いものか……。
「仕方ないのう、ワシが降ろしてやろう」
そう言うとアンさんは一瞬で巨大なドラゴンの姿に変わった。
「ッドドドドドド……ドラゴンだぁーーー!!!」
灯台の上にいたアンさんのことを知っているボク達以外の人が全員驚いていた。
「そこまで驚く事も無かろうて。さあワシの背中に乗るがよい」
アンさんはボク達全員を乗せて、大灯台の最上部から地面に下ろしてくれた。
◇
「しかし下から見ると凄く巨大だねー。これは確かに灯台として便利だわー」
実際に船に乗るカイリさんが感心していた。
「ガワは完成したと言えるね。今度はどうやってこれに階段を作るかだねぇ」
マイルさんがいかに予算を使わないでこの灯台を使い物になるようにするか考えていた。
ボクも何か考えないと、このままでは上に登れないただの巨大なモニュメントにしかならない。
「例えばですが、あのレストランの高台からならこの灯台とほぼ同じ高さくらいになると思うので、そこから吊り橋とか作れないものですか?」
バレーナ男爵様が面白いアイデアを出してくれた。
「いや、それはあまりお勧めできませんね。高低差がある上にまずはこの灯台の上に上り、そこからロープを張らなくてはいけない。それに風の強い日だと勝手に入った人が転落しかねないです」
自警団のリーダーがバレーナ男爵様の意見に反対した。
そして工事担当責任者は今後の工程のことを考えている。
「おれたちは今後の工事をどう進めるかが問題なんだよな」
基礎土台とか耐震とかは問題ないんだろうけど、まずはこの灯台の上にどうやって行くかが問題だ。
「ユカ、そこはアンタが責任を持ってやりなさいよぉ。後のことは考えてあげるから」
え? 一体ボクにどうしろというのか?
◇
その日の夜、ボク達はリバテアの庁舎で担当者達を集めて会議をした。
「とりあえず、ユカ様のおかげで工事資金は使わずに灯台の土台は完成しました。工事資金は丸々復興資金に使わせてもらうことになります」
「ですが、あのままでは灯台の上に上るのは不可能、階段を作らないといけません」
「工事の内容としてはトンネルを掘る要領であの灯台の中をくり抜く形なら可能だが、それだといざという時の耐震性が問題になります」
担当者達の話し合いはあの灯台にどうやって上るかの話になっていた。
「高台からロープを張る方法も考えたが、そんな長いロープがまず強度的に作れないのと、転落の可能性、それに高台との高低差からこれも却下ですね」
ロープを貼れないとなると、やはり階段を作るしか方法が無さそうだ。
「この図面を見てください、これがタックス伯爵から押収した本来の灯台建設予定図です。これを見るとサイズは今の二回りは大きく考えられていたようです。そう考えると、らせん状に周りに階段の部分になる土を盛って、それに転落防止の安全性のために手すりを作っていく方法が良いかと」
「なるほど、それなら確かに可能かもしれないな」
土を盛って作っていく方法だと、ボクのスキルを使えば可能かもしれない。
明日みんなでまた灯台の工事現場に行こう。