371 そして復興へ
◆◇◆
未曽有の大災害から一夜が明けた。
怪我人自体はいたが、幸いにしてこの大震災と火災による死者は一人もいなかった。
「ユカ様。貴方達のおかげです。アレだけの災害だったのに一人の死者も出すことなく助かりました」
「そんな……ボクだけじゃないです。みんなが力を貸してくれたからできたことなんです」
実際そうだ。
ボクのスキルは確かに多くの人を助けることができた。
だけどもしあの時作った土壁が壊れていたら、ここにいる人達は僕達も含めて大半が犠牲になっていた。
それを凄い魔法で助けてくれたのがルームさんとアンさんだった。
ルームさんは決壊寸前の土壁を凍らせて津波を食い止め、アンさんは暴風雨で火災を食い止め、火災旋風すらも消し去った。
バレーナ男爵が深々と頭を下げた。
「救世主ユカ様。ワシらは今日この日を震災祈念日としてずっと未来まで語り継いでいきます。アレだけの大災害を一人の犠牲者すら出さずに助けてくれた救世主とその仲間たちの活躍は……この街だけでなく、国でいつまでも語り継がれるでしょう」
「そんな……皆さんが頑張ってくれたからできたことですよ」
命の助かった人達は避難した高台の所でボク達に誰もがお礼をし、握手を求めてきた。
全員と握手し、お礼が終わったのはもうお昼近くになっていた。
そして全員が炊き出しを食べ、住民はある意味お祭りのような雰囲気になっている。
「ユカ様、幸いにしてあの時の街の人から集まった金は庁舎に残っています。工事は残念ながら見送りますが、アレだけのお金があれば、当面の復興資金にはなるでしょう」
「まああーしも協力するよ。新生ディスタンス商会の立ち上げだよぉ」
「マイル様、そのお手伝い……ぜひとも私達にもやらせてください」
「私達は焼き出された人達に無償の食事を提供いたします」
マイルさんの部下のオンスさんやマクフライさんが率先して復興の手伝いを申し出てくれた。
これだけの人達が協力すれば、街の復興も早く進むだろう。
「僕もフランベルジュ領から復興支援の要請を出します。父上にも協力を呼びかけますので」
「私も手伝いますわ!」
「ふむ、ワシも一度ミクニに戻りあの三人の王に協力を依頼するかのう」
「俺は動物達に頼んで力を貸してもらえるように呼び掛けてみよう」
「力仕事が必要ならオレの部下に任せなー。全員力が有り余ってるからよー」
ボクの仲間も全員が協力して街の復興を手伝おうとしている。
さて、僕もできることを考えないと。
そういえば、バレーナ男爵様が灯台の工事を見送ると言っていた。
あの灯台の場所、ボクのスキルがあれば工事をしなくても、巨大な灯台を作る事ができるのではないのだろうか。
「バレーナ男爵様。ボクに灯台を作らせてくれませんか?」
「え? ユカ様が一人で?? まああの巨大な土壁を一人で作れるユカ様なら可能か……ぜひともとお願い致します」
バレーナ男爵様が僕に頭を深く下げてきた。
◇
ボク達は工事予定地に到着した。
目の前には崩れた土壁とまだ凍り付いた海が残っている。
「凍り付いた海はワシらがどうにか元に戻してやろう」
「ユカ様、海の処理は私達にお任せ下さいませ」
ホームさんが剣で氷の塊を切り、ルームさんが炎で溶かす。
そして元に戻った海水はアンさんが水を操って海に戻す。
これらの作業をしてくれたおかげで、あれだけの大津波は何の被害も出さずに海にどんどんと戻っていた。
さて、ボクはマイルさん達と一緒に大灯台の工事現場で行動を開始しよう。
「ボクのスキルでこの場所を高い場所にチェンジ!」
すると、ボクのスキルは一瞬で大灯台建設予定地をこの街で一番何よりも高い土で出来た塔のような姿にせり上げた。
「やった、成功だ!」
「凄い……一瞬で灯台が完成した」
バレーナ男爵様がボクのスキルに驚いていた。