369 ボク達が起こした奇跡
ボクの身体に凄い魔力が流れ込んできた。
もしその力を使わなければ体の中で暴発した魔力が爆発しそうなほどのエネルギーだ。
ボクはその魔力を右手で受け取り、左手から放出した。
凄まじい魔力が辺り一面に放射される。
ボクのマップチェンジスキルは本来の力を遥かに上回るスキルの効果になった。
マップチェンジで海をせき止めるように巨大な壁が海岸にせり上がった。
だがその壁は巨大な津波にどんどん砕かれていく。
この程度ではダメだ。
「ボクの魔力の全てで海に津波をせき止める巨大な壁を作ってくれ!」
ボクはマップチェンジスキルで作られた壁を砕かれても砕かれても何層も作り続けた。
しかし自然の脅威はボクのスキルで抑えきれない。
ボクはスキルで壁を作り続けた。
津波は次々と押し寄せ、その巨大な水の塊はどんどんと巨大な土壁を破壊していく。
それでもボクは負けずにスキルで壁を作り続けた。
「うおおおおおー!」
「ユカ様! 私の魔力、全て使ってくださいませ!」
「ワシの魔力もありったけ持って行くがよいわ!」
ルームさんとアンさんのおかげでボクは魔力を失うことなくスキルを使い続けている。
それでも津波はどんどん街に押し迫っていた。
ボクが作った壁がどんどん砕かれていく。
だがボクのやったことは無駄ではなかった。
津波はせき止められるたびにどんどん威力を失い、街に押し寄せていた津波が落ち着いていく。
だがこちらの魔力量も限界だ。
あと一枚……土壁を破壊されたら今までくい止めた津波が街を飲み込む。
これ以上壁を作れるだけの範囲は無い。
この壁が最後の壁だ。
頼む、みんなの願いを背中に受けているボクが負けるわけにはいかないんだ。
どうにか津波は抑えられそうになってきた。
やった、ボクは少し安堵感を感じた。
だが、その油断がボクのスキルにほころびを作ってしまった。
少し気の抜けたタイミングで、ボクの作った土壁にヒビが入ってしまった。
ヒビはどんどん大きくなり、津波のエネルギーが壁を砕いていく。
この最後の壁が壊れたら、今まで喰い止められた水の力がこの高台すら飲み込んで全員一巻の終わりだ。
辺りに悲壮感が立ち込めていた。
「ユカ様! 私にお任せ下さいませ!!」
ルームさんがボクの手を離し、津波の押し寄せる壁の方に杖を向けた。
手を離されたことでボクの魔力は一瞬で枯渇し、これ以上の壁は作れなかった。
「イオリ様! 私をあそこまで吹き飛ばしてくださいませ!」
「無茶をする奴じゃのう。そんなとこまでえんとらに似てきたわい」
「お願い致しますわ!」
「よかろう! 突風よここに在れ!」
アンさんがルームさんを巨大な風で吹き飛ばした。
「これで……ユカ様のやったことは無駄にさせませんわ! アブソリュート……ゼロ・テンパルチャァアアーーー!!」
津波の正面に出たルームさんは、究極の氷魔法を放った。
丁度ボクの作った最後の土壁が破壊され、波が押し寄せようとしたタイミングで、ルームさんの絶対零度魔法が炸裂した。
押し寄せる津波はヒビの中で完全に凍り付いた。
巨大な波はその形のまま、巨大な氷山のような氷の塊になり、そのまま動かなくなった。
「やった……私やりましたわ!!」
「うむ、見事な魔法じゃった」
周りの人達が歓喜の声を上げていた。
ボク達全員が街の人達に感謝された。
これだけの大災害にもかかわらず、死者は誰一人出なかった。
これはボク達が起こした奇跡と言える物だった。
凍り付いた津波はもう動かない。
そしてボクが作った土壁はヒビが全部に入りその場に砕け散った。
だが凍り付いた津波は土壁と混ざり、その場に崩れ落ち、大波として街に押し寄せることは無かった。
ボク達はついに全員の力で災害を乗り切ったのだ。
疲れたボク達はその場に座り込んでしまった。