368 押し寄せる津波を食い止めろ
◆◇◆
ホームさん、ルームさん、フロアさん、アンさん。
みんなのおかげで地震の犠牲者は誰一人出る事無く、住民が全員高台に避難できた。
「ヤロー共、オレ達がするべき事は何だー!?」
「今はメシを用意することです!」
カイリさんは船から運んできたありったけの食料を、高台に用意した。
「マイル様、私達が料理を手伝います」
「マクフライさん、助かるよぉ。あーし達もできることをしないとねぇ」
「マイル様、料理なら私達の料理係もおります、手伝わせてください」
「オンスさん。ありがとうねぇ」
カイリさん、マイルさんと元海賊達や商隊の人達も全員が協力して、この災害を乗り切ろうとしている。
「ユカ坊、向こうはもう無事じゃぞ。安心するがよい」
ドラゴンのアンさんは凄い魔力で雨雲を呼び寄せ、豪雨で大火災を全て消してくれた。
「アンさん、ありがとうございます!」
「礼なぞいまはどうでもよい。それより住民は全員避難できたようじゃな」
「はい、皆さんのおかげです」
アンさんが厳しい顔をした。
「じゃが安心するのはまだ早いかもしれんぞ。この震災には何者かの悪意を感じるわい」
「何者……まさか、魔族!?」
「わからぬわい、じゃが……これだけの未曽有の被害を作り出せるとしたら……魔将軍並の者かもしれぬの」
アンさんがこの地震や火事といった災害が何者かの起こしたものだと言っていた。
「ユカ坊! ここは危険じゃ! 下手すればここすらも津波に飲み込まれるかもしれん!!」
「アンさん、それはどういうことですか!?」
「うむ、長年ワシは生きておるが、大昔に人を救えんかった事があったのじゃ。その時も地震が起き、高台に逃れた者達がおった。じゃが地震の影響による津波はその高台すらも飲み込むほどの高さになり、逃れた村の者全員が海の藻屑となったのじゃ」
まさか、この高台以上に押し寄せる津波があるとは……。
「その時の高台はここよりも高かった、それにもかかわらず津波は全てを飲み込んだのじゃ」
「それでは……ここにいる人達が全員助からない可能性もあるんですか!?」
「そうとは言い切れぬ、じゃが用心に越したことはない」
そう言ってもここ以上に高い場所なんてすぐに行けるわけがない。
「それでしたらユカ様がワープ床を作って全員を避難させれば……」
「そんな時間は無さそうじゃ、ほれ見るがよい!」
アンさんが指さした方向から巨大な津波が押し寄せてきた。
このままでは街の全てが飲み込まれてしまう。
「おい、あれを見ろ!」
カイリさんが指さした方角には、沖合いに流されたカイリさんの船アトランティス号があった。
その船が津波に飲み込まれようとした時、海から白い巨大な鯨が姿を現した。
「グォオオオオーン!」
「あれは……ホセフィーナじゃねーか!?」
大鯨はその身体でカイリさんの船を守った。
大鯨の身体のおかげでカイリさんの船は転覆せずに済んだ。
「ありがとうよー。ホセフィーナ」
大鯨はその身体で船を守ると、再び海に潜り津波の中に姿を消した。
「このままでは港が全滅だ!」
「自由都市リバテアもこれで最後か……」
住民の顔にあきらめの表情が見えていた。
ボクにできることがあるなら、この人達を助けてあげたい。
ボクにできること……それはマップチェンジのスキルだ!
「ボクの力で……あの津波の前に大きな壁を作ってくれ!!」
ボクがマップチェンジスキルを使うと、魔力がごっそりと持って行かれた。
全身から力が抜ける。
あれだけの大きな津波を防ぐ壁を作るには、ボクの魔力では足りなかったのか……。
「ユカ様、私の魔力をお使いくださいませ!」
「ユカ坊、ワシの魔力も使うがよい!!」
「二人共……ありがとう!」
ボクの右手をルームさんが、握り、ルームさんの手をアンさんが握った。
二人の絶大な魔力がボクに流れ込んでくる。
この魔力量なら津波を防ぐ壁を作れるかもしれない!!