365 予想だにしない災害
リバテアで集まった税金は搾取された油税を大きく上回る額になっていた。
「さて、どうしましょうかこのお金」
「そうですね、正しい使い方したいですよね」
「ワシがこれの使い方を考えなくてはいかんのですわな。難しいですわ」
強欲な人なら目の前の大金に目の色を変えるところなのだろうけど、バレーナ男爵様はこのお金を見て頭を悩ませていた。
「まあ病院や子供のための勉強できる学校を作れればいいのですが、その前にもっとこの街ならではの使い方があるはずなのです」
「バレーナ伯爵様、これは元々油税だったお金なので、これで大きな灯台を作ってはどうでしょうか?」
ホームさんが灯台を作る提案をした。
集まっていたみんながそれに賛成していた。
「そうだな、それが一番良い使い方かもしれないな」
「そうですわ、そうすれば夜でも船が困ることなく港に到着できますわ」
「ふむ、そうじゃな。それがいいかもしれんのう」
全員が灯台建設に賛成していた。
「そうですね。皆さんの意見を参考に港に大きな灯台を作ることにしましょう!」
ボク達は自由都市リバテアのシンボルになる大灯台を作るため、みんながそれぞれのできることを始めた。
次の日、ヒロが通行止めにしていた港の工事現場にはリバテアの住民たちが集まり、工事を再開した。
ここには大きな灯台が作られる。
そのために住民はみんなが力を合わせて灯台の工事に協力した。
そんな中で働く人たちの胃袋を満たしたのが、串揚げの屋台だった。
串揚げを食べ、工事を進め、住民の人達はとてもいい笑顔をしていた。
◆◆◆
「まったく、気に入らないのよっ!」
海の上に何者かの影が見えた。
「クズ人間どもの喜んだ笑顔……虫唾が走るわ」
海の上に浮遊しているのは、魔将軍のアビスだ。
ヒロの計画頓挫でリバテアを苦しめられなかったアビスは次の手段に出た。
「その笑顔が恐怖の泣き顔に変わるのが楽しみ……キャハハハ!」
アビスは手を上げると海に向かってエネルギーを解き放った。
最強クラスの魔法、アースクエイクだ。
「キャハハハハ、折角喜んでいるところなんだけど……アタシちゃんの素敵なプレゼントを受け取ってちょうだいね」
海に放たれたアビスのエネルギーは巨大な地震となり、リバテアの街に直下型の大災害をもたらした。
「あ、そうそう。これだけだと足りないからね。もっと素敵な演出してあげようじゃない」
アビスはそう言うとその場から一瞬で姿を消した。
「ここでいいわね、ヒロちゃんの倉庫だったとこだけど。ここならよーく燃えるわね。キャハハハハ」
アビスは無人の倉庫の穀物に火を付け、上空に上がって地震で苦しむ人達の姿を眺めていた。
「さて、何人死ぬかしら……。他の四天王ちゃんにも賭けに乗ってもらおうかしら。まあ最低5000人は死んでもらわないと賭けにならないわ」
アビスは邪悪に濁ったどす黒い目で苦しむ人達を横目に、姿を消した。
◆◆◆
工事現場を手伝っていたボク達が異変に巻き込まれたのはお昼前だった。
「地震だ!!」
「な……なんですと、このリバテアがバレーナ村だった頃から地震なんて起こったことはありませんのに!!」
「僕は逃げ遅れた人がいないか確かめに行きます! ルーム、ついてきてっ!」
「わかりましたわ! 私も行きますわ」
ボクは工事現場の人達が逃げだせるように道を開けようとした。
だが、工事現場と街をつなぐ橋がこの地震で落ちてしまっている。
「ダメだ! 橋が落ちてる。このままではおれたち全員津波に飲まれるぞ!」
「ユカさん、貴方のスキルならみんなを助けられるはず、頼む!」
フロアさんがボクにスキルを使うように頼んできた。
ボクのスキル、マップチェンジなら橋を作れるかもしれない。
ボクは落ちた橋の前で手を広げ、エネルギーを集めた。
「ボクのスキルで目の前の海を橋にチェンジ!」
スキルを使うとボクの目の前に街に行く道が出来た。