364 バレーナ男爵の初仕事
ゴーティ伯爵様にバレーナ村村長への男爵の爵位を与える証書をもらったボク達は、すぐにワープ床を使って冒険者ギルドの部屋からみんなの待つリバテアに戻った。
「おかえりなさい、ずいぶんと早かったですね」
「これが父上から預かってきたバレーナ村村長さんの爵位を得る証書です」
「ま、まさかこの貧乏な漁村の村長に過ぎなかったワシが男爵にしてもらえるとは……」
「父上が村長様によろしくと伝えて欲しいと言っておりました」
「何と勿体ない……ワシごときが」
バレーナ村の村長は自身が爵位を得たことがまだ信じられないといった様子だった。
「バレーナ男爵殿、ここにいる者達は皆貴公に協力します。我々帝国騎士団がバレーナ男爵の就任を証明致します!」
「わ、わかりました。不肖このバレーナ男爵。このリバテアのため、粉骨砕身の努力をさせていただきます」
周りから大きな拍手が巻き起こった。
男爵になった村長さんは、みんなが見ている中で執務室の椅子に座り、リバテアの新統治者に就任した。
「さて、これから忙しくなりそうです。ワシができることはまだまだ少ないですが、皆さん是非ともこの街のためにご協力お願い致します」
そしてバレーナ男爵は新たに仕事に取り掛かった。
まずは不当に解雇された正規のリバテアの公務員の呼び戻しからだった。
バレーナ男爵は、公務員任命の書類一枚一枚にサインをしていった。
その枚数はかなりのものだったが、男爵は休む暇も惜しんで全員の書類を書き上げた。
その数は千枚以上になっていた。
「ご苦労様です。それでは我々帝国騎士団は南方の救援に向かうため、この地を離れます。皆様のご活躍を期待しております!」
「ありがとうございました、また是非ともバレーナ村にお立ち寄り……あ、間違えましたわ」
「ハハハハ……」
村長さんはまだ慣れていないといった感じで街の名前を間違えていた。
まあ長年住んでいた村の名前なので愛着があったのだろう。
「失敗してしまいましたわ。まあワシは元々が小さな村の村長でしたから」
「大丈夫ですわ、男爵様のお人柄がよくわかりますわ」
ルームさんがニッコリと笑っていた。
「男爵様、僕で良ければ少しはお手伝いさせていただきます。これでもフランベルジュ領の領主代行をしておりますし、父上にそういった為政者としての教育は受けております」
ホームさんはバレーナ男爵様の手伝いをすると言っている。
「そ、それは非常にありがたいです。是非ともよろしくお願いします」
バレーナ男爵はホームさんに深々と頭を下げた。
「わかりました、ではまず不当に徴収された税の返還ですね」
「そうですな、街灯を作るためといって不当に奪われた油税を住民の皆様に返しましょう」
バレーナ男爵は納税課のスタッフを呼び、税金の使い道を調べ直した。
「タックス伯爵の不当に得ていた税収と賄賂、それに私有財産を合わせるとかなりの額になります」
「それらは全部この街の人達が不当に奪われたお金です、ワシがサインしますので全員分返してあげてください」
「承知致しました、バレーナ男爵様」
納税課のスタッフは不当に解雇された優秀な人達が多く、タックス伯爵によって搾取された人達のデータをすぐに調べ上げ、油税の返還が早急に行われた。
金の返ってきた街の人達は、お祭り騒ぎかというくらい派手に金を使い、住民に返還した油税はあっという間に所得税や間接税として再び納税課に戻って来てしまった。
「さて、返したはずの税金がまた戻ってきたのですが、皆さんこれをどうすれば良いと思いますか?」
「そうですね……住民の皆さんのためになることに使うのが良いかと思います……」
バレーナ男爵は集まった税金の使い道を考えるのに頭を悩ませていた。