356 ボクだからできること
ボクは自分のできることを考えていた。
レベルが上がったことでボクはレベル30といったところだ。
A級冒険者と言えるだけの強さになることはできた。
でも力や相手を倒すやり方で今回の話は終わらない。
マイルさんとカイリさんはボクよりもはるかにレベルが上の冒険者だ。
その彼女等があえて捕まっている。
これは何か理由があると考えた方が良さそうだ。
だからといって時間が無い。
話だとどうやらタックス伯爵は明日にはマイルさん達を裁判も無しに処刑しようとしているらしい。
今晩留置所に入って助け出す方法もあるが、それだと合法性が無いのでボク達がおたずね者になってしまう危険性がある。
そうなると今後の冒険が非常に難しくなってしまうのでこれは没だ。
「ボクに一体何が出来るんだろうか」
「ユカ様……そうだ、ユカ様だからこそできることがあります!」
「ボクだからできること?」
ホームさんがボクに話しかけてきた。
「ユカ様は一般の人達に自分が何と言われているかわかりますか?」
「えっと、救世主とか……救い主とか」
「そうです、それだけユカ様は多くの人を今までに助けてきたのです」
どうやら、ボクの身体で旅をしていた『バンジョウソウイチロウ』さんはあちこちで困った人を助けていたらしい。
ボクの身体を悪いことに使われていなかったのは彼に感謝だ。
「そうですわ、今までにユカ様が助けた人達に今度は助けてもらうのですわ!」
「でも……どうやって?」
「ユカ様、いくら横暴な貴族でも人の壁は潰せません、それをやってしまうと国からも軽蔑されますから」
「つまり、ボクはどうすれば良いの?」
「留置所を人の壁で包囲してしまうんですよ」
「そうですわ! ユカ様が今まで助けた人に協力してもらえればかなりの人数で留置所を包囲できますわ」
「でもどうやってそんなに……?」
「ユカ坊、おぬしの持っておるまっぷちぇんじなるすきるでわーぷ床を作ればよいのではないのか?」
アンさんがボクのスキルならできることがあると言っているようだ。
「では……ボクのマップチェンジスキルでワープ床を作ってくれ!」
ボクはスキルでワープ床を作ることに成功した。
「成功ですわ、これで各地の皆様を集めることができますわ」
そう言うとルームさんがワープ床に踏み込んだ。
「ちょ……ちょっと待ってよぉ!」
ボクもルームさんを追いかけてワープ床に踏み込み、別の場所に移動した。
◇
「ここは……?」
「ここは冒険者ギルドの町ですわ。ここはユカ様のための部屋」
ボクの目の前にはいくつかのワープ床が見えた。
「このワープ床を使えばユカ様が作ったワープ床の間を移動する事が出来るのですわ」
「まさか……そんなすごいことが!?」
ボクの身体を使っていた『バンジョウソウイチロウ』さんはこのスキルを使いこなしていたらしい。
だが実際にボクはボクの村から歩いて行ける場所の冒険者ギルドの町に来ているのだ。
「ふむ、夜が明けるまでが勝負じゃ。それまでに協力してもらえる者達を探さぬとな」
ボク達は冒険者ギルドの受付に行った。
「ユカ様、よくお越しくださいました。何か御用ですか?」
「すみません、商隊の人達は今どちらにいますか?」
「商隊の皆様でしたら丁度この町に来られたところですよ」
ボク達は商隊の人達と会うことになった。
「すみません、お願いがあるのですが……」
「これはユカ様。こんな夜に何の御用でしょうか?」
「オンス様、それは私が説明致しますわ。マイルさんを助けるために力を貸していただけますかしら?」
「マイル様が!? もちろんです。それで私達はどうすればよろしいですか?」
マイルさんの名前を聞いた商隊の人達は全員がすぐに反応をした。
「一旦こちらにお越しいただけますかしら」
ルームさんがボクの部屋に商隊のリーダーのオンスさんを呼んだ。
「ではお話致しますわ」