355 自由都市の異変
ゴーティ伯爵様に通行許可証を受け取ったボク達は、自由都市リバテアを目指し、ドラゴンのアンさんの背中に乗せてもらって飛んだ。
「本来ならと大きく回って飛んで行くところなのじゃが、ワシならこの高い山も越えられるわい、しっかり掴まっとれよ!」
アンさんは関所のある方ではなく、山岳地帯の上空を飛び、ショートカットで自由都市リバテアを目指した。
ボク達が朝ゴーティ伯爵様の城を出てから自由都市リバテアに着いたのは夕方だった。
街に着いたボク達はホテルに向かった。
だが、街は物々しい雰囲気になっていて、あちこちに自警団がうろついていた。
「一体何があったんですか?」
「酷い話だよ、串揚げの屋台やってたねーちゃんとにーちゃんがレストランの放火容疑で逮捕だって。それから自警団があちこちに……」
「そこっ! 何勝手に出歩いている! 今はタックス伯爵様が戒厳令を布いているはずだ。逆らうとお前も牢屋にぶち込むぞ!」
自警団に怒鳴られた街の人は怯えたままどこかに行ってしまった。
「何か胡散臭いですわね」
「ルーム、やはりそう思うか」
「これは……なにか邪悪な気配がぷんぷん漂っておるのう、妖気が臭くてたまらんわい」
どうやら自由都市リバテアは今大変な状況になっているようだ。
ボク達はホテルに向かった。
「おお、ユカ様。お久しぶりです」
どうやら店の人はボク達のことを覚えていたようだ。
「人数分泊まれますか?」
「ええ。もちろん部屋は開いております……ですが」
「ですがって、一体どうしたんですか?」
「昨日から長期滞在のはずのお連れ様が戻られないのです」
町の人が言っていた話だ。
どうやらマイルさんとカイリさんが捕まってしまったらしい。
「ユカ様、どうやらカイリさんとマイルさんが捕まってしまったようですね」
「そうだね、でもどうすれば」
「ユカ坊、今すぐどうこうしようとしてもまだ時ではないぞ、それにいくらなんでも取って食おうとはせんじゃろう。それにあやつらの力量で負けるとも思えん。何か理由があるようじゃ」
アンさんが冷静になるように諭してきた。
「わかりました、では部屋に戻りましょう」
ボク達が部屋に戻ろうとした時、僕達の後ろに中年の夫婦が呼び止めた。
「あの……貴方様が救世主ユカ様ですね。私達のお願いを聞いていただけますでしょうか」
「あなたたちは誰ですか?」
「お、おぬしらは串揚げの店のものではないか」
「ハイ、私達はマクフライ夫婦と申します。元ディスタンス商会の料理人でマイル様の部下でした」
どうやらこの人達はマイルさんの関係者らしい。
「お願いです! マイル様を助けてください。このままではマイル様は死刑にされてしまいます!!」
「ちょっと待って下さい。一体どういうことですか?」
「マイル様はヒロのレストランの放火犯ということにされて、今投獄されています」
いきなりとんでもない話が舞い込んできた。
「ちょっと待って下さい、僕の知っている限り、帝国における死刑は裁判の上でないと出来ないはずです」
「はい、ですがここは自由都市リバテア。国の法律とは別の自治が許された場所なのです。その統治者がいきなり代わり、そして油税を徴収したりマイル様を無実の罪で投獄したりしているのです」
マクフライさんの話を聞いてルームさんが怒りを表していた。
「何ですって!? 私許せませんわ。私の魔法で全て吹き飛ばして差し上げますわ!!」
「ルーム、少し落ち着いて」
「でもお兄様、このままではマイルさんが」
「こんな時だからこそ落ち着くんだ」
ホームさんがルームさんをなだめていた。
「でもどうやって助け出せばいいんですか?」
「私もどうしていいかわかりません」
ボクは、今の自分ができることを考えてみた。