354 バスラ伯爵領へ
ボク達はゴーティ伯爵様の待つ応接の間に到着した。
「皆様、よく戻って来てくれました。特に……ユカ様、かなりレベルが上がったようですね」
ゴーティ伯爵様はボクを見てレベルが上がったことを確認していた。
「どうやら、その様子だとフワフワ族に会う事が出来たようですね。何かわかりましたか?」
「父上、時渡りの神殿とはご存じでしょうか?」
「ふむ、時渡りの神殿ですか……」
ゴーティ伯爵様は何かを知っているようだった。
「時渡りの神殿はこの大陸の南東にあります。ですが今は行くのが容易ではないでしょう」
「父上、それはどうしてでしょうか?」
「あの辺りはバスラ伯爵領になります。いくら私が伯爵とはいえ、勝手に領内に侵入するのは越権行為になってしまいます。それに……あのバスラ伯爵が私の身内が領内に入ることを認めるとは思いません」
「お父様、バスラ伯爵とは一体どのような人物なのでしょうか?」
ゴーティ伯爵様の眉間に皺が入った。
「バスラ伯爵は……公爵派貴族の掃除人と言われています。つまり、バスラ伯爵の領には巨大なゴミ捨て場があり、国中の人に言えないようなゴミが集められて処分されているのです」
「お父様……まさかゴミって……」
ゴーティ伯爵様がため息をついた。
「ルームの想像通りですよ。彼らはゴミと言っていますが、生きたまま連れてこられる人もいるようです」
「ひどい……そんなの許せませんわ!」
「ふむ、そのバスラとかいうの、間違いなく魔の者に魂を売っておるな。今までのぱたーんを考えると大抵はそういうことになっておるわい」
アンさんが憤っている。
「流石は龍神イオリ様です。おっしゃる通り、公爵派の貴族の大半は魔族と通じているでしょう。ですがまだ証拠が見つかりません。今タイミングよく公爵派貴族の一人、タックス伯爵の不正の証拠を送ったところでして、今頃自由都市リバテアに帝国騎士団が到着している頃でしょう」
「ふむ、そなたは抜け目のない性格のようじゃな」
「恐れ入ります……」
ゴーティ伯爵様は公爵派貴族の切り崩しを考えているようだ。
「では……ボク達はどう動けばいいのでしょうか?」
「そうですね、一度リバテアに戻ってはどうでしょうか? その上でバスラ伯爵領を目指す形にしてみては。一応私の名前で通行証は人数分出させていただきます」
「ありがとうございます。ここにいないカイリさんとマイルさんのも……」
「勿論出させていただきますよ、お待ちください」
ボク達はゴーティ伯爵様の城で通行証が用意できるまで待つことになった。
ボクが城の料理人の人にプハの実を渡すと、料理人の人は見事なクレープを作ってくれた。
「コレがプハの実で作ったクレープ。美味しそうですわ」
「ルーム、はしたないよ。もう少し落ち着いて」
ボク達はその日の夜、プハの実のクレープを主食に城でご馳走をしてもらった。
クレープは少しクセがあるもののとても美味しく料理されていた。
「美味しいですわ! これがプハの実なのですね」
「プハは栄養のある植物、この実は命の実とも言われている」
ボク達の村にはプハの実はなかった。
だがプハは一部の地域で主食として食べられているようだ。
ボク達は出された食事を美味しくいただいた。
夕食を食べ終わったボク達は執事さんに案内されて客間に泊まることになった。
ボク達はサラサさん達にもらったプハの実をゴーティ伯爵の使用人に渡した。
「私達もプハの実を育ててみます」
使用人は庭師にプハの実を手渡した。
城の畑にプハの実が植えられた。
半年後くらいにはプハの実が実るのだろうか。
ボク達は客間で旅の疲れを癒し、ぐっすりと眠った。
次の日、アンさんはまた巨大な紫のドラゴンの姿になり、ボク達を背中に乗せて自由都市リバテアを目指して飛んだ。