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348 子鯨のシャトル便

◆◆◆


 仕事をしていたゴーティ伯爵の部屋に伝書鳩が到着した。


「おや、何かあったようですね」


 ゴーティ伯爵は伝書鳩の持ってきた手紙を読んだ。


「なるほど……どう考えても前任者は無実、それを強引にタックス伯爵を自由都市リバテアの統治者にするために罪をでっち上げたようですね。しかし、タックス伯爵とは……」


 ゴーティ伯爵は本棚の鍵を開け、そこから一枚の紙を取り出した。

 そしてそれとは別に手紙を書いて伝書鳩に括り付けた。


「これで……タックス伯爵だけでなく公爵派の動きを潰せればいいのですが」


 ゴーティ伯爵手紙を書き終えると再び執務を続けた。


「そろそろユカ様達が戻って来てもおかしくなさそうですね」


 伯爵は暦を見て数日前に出かけたユカ達の戻ってくるのを待った。


◆◆◆


「ハーマン、頼んだぜー」

「ピイイー!」


 カイリはハーマンの背中に数人乗れる椅子を作って縛った。

 この椅子に乗せたお客さんを船に乗せ換えて沖合で料理を買ってもらう作戦だ。


「これなら停泊代も必要なければ船でないので文句の言われようが無いからねぇ」


 ハーマンによる鯨のシャトル便は好評で、お客さんは次から次へと集まってきた。


 ヒロはまさかこんなことになっているとは思わないので油断をしている。

 それにお客さんを船に乗せているのは港の外側なので工事現場には一切立ち入らずにお客さんの輸送が出来ているわけだ。


 ハーマンは少し大変そうだったが、親友のカイリの為に頑張ってくれた。

 ハーマンはカイリにお母さん鯨のホセフィーナと再会させてもらった恩が有るので少しくらいの無茶は喜んで引き受けてくれている。


 また、鯨の背中に乗れるというのもお客さんには初めての体験でとても好評だった。


「これ昨日よりよっぽど客増えてないかー?」

「そうだねぇ。でも、みんな良い笑顔で買い物してくれてるよ」


 マイルは満足そうなお客さんの表情を見て嬉しそうだった。

 彼女はやはり生まれついての商売人なのだろう。


「さて、ヒロの店はどうなってるのかねぇ」


 双眼鏡で覗いたヒロの店は明らかに客が減っていた。

 それもそのはずだ。

 料理人に生気がない。


 こき使われた挙句、油で火傷だらけの料理人達は疲労困憊といった状態だった。

 だれがいつ倒れてもおかしくない状況だ。


 料理人がこんな状態で作った料理が美味しいわけがない。


 ヒロのレストランはどんどん客が離れていった。


「マイル、オレたちの勝ちだなー」

「そうねぇ。でも油断はできないわ。ヒロはどんな手を使ってもあーしを潰そうとするだろうからねぇ」


「ではこの作戦も次の手を考えた方が良いってわけだなー」

「そうねぇ。リバテアを一旦離れるのも仕方ないかもねぇ」


 マクフライ夫婦は今日も一心不乱に揚げ物を作っていた。

 だが疲れた様子はない。

 きちんと休憩時間を用意し、仕事はかっちりこなすやり方がディスタンス商会の働き方だ。


 休憩時間をしっかり取ったマクフライ夫婦は最良のコンディションで仕事を続けれていた。


「そろそろ材料が尽きてきたぜー」

「そうねぇ。今日はここらへんで店じまいだねぇ」


 串揚げとフライは完売し、並んでいたお客さんは全員が帰った。


「さて、それじゃあ船に戻るかねぇ」

「オイ、あれを見ろよー。どうやら火事みたいだぜー」

「なんだって!?」


 ヒロのレストランを双眼鏡で覗いたマイルとカイリはレストランから火が上がっているのを目撃した。

 どうやら疲労でまともに動けなかった料理人が油をこぼしてしまい、それに火がついたらしい。


「カイリ、船を用意して」

「わかった。オレも行くぜー」


 マイルとカイリの二人は火事で燃え盛るヒロのレストランの逃げ遅れた人を助けるために船を走らせた。


「あれこれ考えるのは逃げ遅れた奴を助けてからにしようぜー!」

「そうだね、急いでっ!」

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